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この記事では、ビジネスモデルキャンバスのメリットや構成要素、作成方法など、基礎知識について解説します。ビジネスの全体像を把握するために効果的なフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」を理解し、適切に作成しましょう。
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ビジネスモデルキャンバスとは、企業や組織のビジネスモデルを、その構成要素や構造を設計図のように記したフレームワークです。英語の Business Model Cancas の頭文字を取って BMC とも呼ばれます。
ビジネスモデルとは簡単に言えば、企業が行う事業の仕組みや方法のことです。たとえば「事業の対象となる顧客、ユーザーは誰か?」「どのようにして収益を上げるのか?」「どのような媒体で行うのか?」などといった内容を示します。実際のところ、ひとつの事業システムを詳細に示すのは複雑です。それをこのビジネスモデルキャンバスを用いて “設計図” のように視覚化することで、その事業の価値を見極めることができます。
ビジネスモデルのフレームワークには「リーンキャンバス」と呼ばれるものも存在します。一般的にはビジネスモデルキャンバスが用いられますが、主にスタートアップや新事業を開始する場合には、リーンキャンバスを使用することが多いです。
この 2 つのフレームワークはそれぞれ異なる構成要素を持ち、リーンキャンバスのほうは顧客や課題、製品、サービスにフォーカスして開発されたものと考えられます。
記事: リーンキャンバスとは?書き方などの基礎知識を解説ビジネスモデルキャンバスを作ると、以下のようなメリットがあります。
事業の仕組みを明確化できる
関係者の認識を揃える
ニーズにあった事業を展開できる
競合分析に役立つ
ではそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
ビジネスにはさまざまな要素が絡み、複雑に構成されています。ビジネスモデルキャンバスを作成すると、そのそれぞれの要素の関係性が明らかになり、全体像を正確に把握することができるようになります。後述しますが、ビジネスモデルキャンバスのテンプレートは一枚に簡潔にまとめて示されます。何十枚もの文書ではなく、一目で事業の全体像をとらえることができるのも、このビジネスモデルキャンバスの大きなメリットです。
業務を効率的に進めるには、テンプレートを活用することがおすすめです。ビジネス計画や目標設定のためのテンプレートから、ガントチャートやイベント計画のテンプレートなど、個々のニーズに応じたテンプレートを作成して、仕事を効率化しましょう。
Asana で作成できるテンプレート検索ビジネスモデルキャンバスを作成しステークホルダーと共有することで、関係者全員の認識を揃えることができます。一枚にビジネスモデルがまとめられた BMC により、認識のズレを防ぎ、全員が同じ方向を向いて事業を展開することができるようになります。
ビジネスモデルキャンバステンプレートには、顧客のニーズに関する項目が設けられています。ビジネスモデルを考えるときに、この「ニーズ」も考慮することで、求められている価値と事業が提供する価値を擦り合わせることが可能となるのです。
ビジネスモデルキャンバスは競合分析にも役立つフレームワークです。競合分析のフレームワークは SWOT 分析が有名ですが、ビジネスモデルキャンバスもまた、他企業が対協する商品やサービスの価値や顧客との関係といった項目を挙げていくことで、自社と何が違うのか、自社にはない強みもしくは弱みは何か、などといった比較分析を行うことができます。
競合分析テンプレートを作成ビジネスモデルキャンバスは、アレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏の著書『Business Model Generation (ビジネスモデル・ジェネレーション)』(2010) によって提唱されたフレームワークです。両氏はこれを「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述した」と定義し、9 つの構成要素を提示しています。
顧客セグメント
価値提案
チャネル
顧客との関係
収益の流れ
リソース
主要活動
パートナー
コスト構造
構成要素ひとつひとつを詳しく見ていきましょう。
この項目には、自社製品またはサービスのターゲット層は誰かを示します。対象となる顧客は「ペルソナ」として、その年齢や職業、性別、居住地域などといった具体的な属性を設定します。なるべく抽象的な表現は避け、ユーザー層を明確にするのがおすすめです。
以下のような質問の答えになるコンテンツを盛り込みます。
誰に対して商品やサービスの価値を提供したいか?
意思決定者は誰か?
前項で明確化したターゲットユーザー層が必要としている価値を示します。対象が求める「ニーズ」とそれに応える「自社の価値提案」の場と考えてもいいでしょう。なぜ顧客が自社商品やサービスを購入するのか、その理由となる項目です。
以下のような質問の答えとなるような内容を提示しましょう。価値提案は複雑な表現は避け、できるだけ簡潔かつシンプルに表します。
対象顧客が抱える課題は何か?
なぜ顧客は自社製品を選ぶのか?
ターゲット層に価値を提供するために利用する媒体、メディア、アプローチ法を特定します。チャネルは「販売経路」とも言い換えられます。どのように価値を顧客に届けるのかを考えます。
「チャネル」の項目には、以下のような質問の答えになるコンテンツを盛り込みます。
ターゲット層はどのように自社製品を購入するか?
顧客とのコミュニケーションを行う場はどこか?
決済方法、アフターフォロー、CS システムはどのように行うか?
① で設定したターゲット層とどのような関係構築を行うのかを明確化します。長く深い関係性を構築すれば、それだけ企業にとっては利益も大きくなります。ライフタイムバリューをどのようにして最大化するのかを考慮した内容を盛り込むようにしましょう。
「顧客との関係」の項目には、以下のような質問の答えになる内容を盛り込んでください。
アフターサービスはどのようにするか?
顧客とのコンタクトは対人か、ウェブサイトなどを通したオンラインか?
どのような収益が予測されるのか、収益の種類をいくつかに分けて記載します。たとえば、製品の販売ならば物販による代金、サブスクなら月ごとの契約による月額料金や使用料、企業の知的財産を使用するならその対価に対する収益、といった具合に具体化しましょう。
「収益の流れ」に盛り込むべき内容は、たとえば以下の質問の答えなどです。
どのような収益を得られるか?
支払い形式はどうなるか?
事業を展開するにあたって、必ず必要となる主要リソースを書き出します。人的リソースや金銭的リソースのほかに、不動産や設備などのリソース、ノウハウや技術といった無形資産まで、すべてを考慮して記載しましょう。
「主要なリソース」には、以下の質問の答えになるような内容を記述します。
必要な「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」は何か?
他社の権利を侵害していないか?
事業を展開する上で重要となる活動を記述します。「価値提供に実行すべき業務は何か?」と自問し、タスクとして落とし込んでいきましょう。顧客に価値を提供するために必要な活動だけでなく、リソースをどう創出していくのかといったポイントも考慮して考えます。
「主要な活動」には、以下のような質問の答えになるコンテンツを盛り込みます。
商品開発はどのように行うか?
広告活動はどのように行うか?
事業展開する上で必要となるパートナーを記述します。提携先や取引先、仕入れ先、代理店、サプライヤーなど、どのようなパートナーがどのくらい必要かを示しましょう。自社商品が消費者に届くまでに必要なステップには、自社リソースではまかないきれない業務があるかもしれません。そこで必要なパートナーシップを洗い出し、明確化します。
「パートナー」の項目は、以下のような質問に答えながら書き出していきましょう。
社内で足りないリソースはあるか?ある場合は、どのようにして補うか?
リスクヘッジは十分か?パートナーを探しておくべきステップはあるか?
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構築しようとするビジネスモデルにおける「必要なコスト」を記載します。事業を実行、運営、展開していくためには必ず必要となる費用があるはずです。その要素を明らかにしましょう。
これまでの要素に着目し、それぞれにどのようなコストが発生するか考えてみると、わかりやすいでしょう。
「リソース」を獲得するには、どのような費用が発生するか?
「主な活動」ではどのような費用が発生するか?
「パートナー」と協業する上でどのようなコストが発生するか?
ビジネスモデルキャンバスは、一枚の紙に、前項で挙げた 9 つの要素すべてを書き出して言語化します。この際、前項の ① から ⑨ の順で埋めるのが一般的ですが、絶対に守るべき書き順というものは存在しません。
ただし、「顧客セグメント」と「価値提案」から書き始めるべきだと言えます。事業には「顧客」と「価値」という要素が必要不可欠であり、最も重視されるべきポイントだからです。ビジネスは、商品を消費する “お客様” と彼らのニーズを満足させる “価値” がなければ成立しません。
紙の一番左に「顧客セグメント」、中央に「価値提案」という枠を作ったら、両者の間に「顧客との関係」と「チャネル」を二段ではさみます。紙の一番右には「パートナー」枠を作り、「価値提案」との間に「主要活動」と「リソース」枠を二段で作成します。さいごに、図の下部には「コスト構造」(左下) と「収益の流れ」(右下) を加えれば、ビジネスモデルキャンバスのテンプレートが完成します。
ここでは、できるだけ効果的なビジネスモデルキャンバスを書くためのコツをご紹介します。
一枚の紙にビジネスの全体像を視覚化できるというのが、ビジネスモデルキャンバス最大のメリットです。そのメリットを最大限活かすためには、それぞれの項目が簡潔かつシンプルに記述されていることが重要となります。
ビジネスモデルキャンバスは、事業関係者と必ず共有するべき文書です。このとき、物理的な紙で作成された BMC では紛失の恐れがありますし、スプレッドシートなどでデジタルのものを作ったとしても、メールやチャットなどで共有しては他の情報に埋もれる可能性が高いです。ビジネスモデルキャンバスは、事業の全体像を明確にし、関係者と足並みを揃えるために非常に役立つツールですが、すぐにアクセスできない状態にしてしまうと、その効果は消えてしまいます。
そのような状況を避けるためには、ビジネスモデルキャンバスを「いつも仕事をする場所」に管理、保管しておくことが効果的です。たとえば Asana のようなプロジェクト管理ソフトウェアなら、利害関係者が常にアクセスできる場所にビジネスモデルキャンバスを置いておくことができます。
仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務と目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。
ビジネスモデルキャンバスは、一度書いたら終わりではありません。作成後は実際に各要素を検証し、修正が必要な場合は書き直しましょう。その際、前項に挙げた方法で関係者としっかり共有すれば、足並みも崩れません。昨今は市場の変化も激しく、企業はその変化にその都度適切に対処しなければなりません。その場合にはビジネスモデルキャンバスを更新する必要も出てくるでしょう。定期的に見直し、改善していくことを忘れないようにします。
では、ビジネスモデルキャンバスの具体例として、Starbucks (スターバックス) の例を取り上げてみます。スターバックスのビジネスモデルキャンバスの各項目はどのような内容で埋められるでしょうか?
顧客セグメント: コーヒーを飲みたい人、勉強したい学生、作業したいフリーランサー、時間をつぶしたい人
価値提案: コーヒー好きのための空間の提供。学生やフリーランサーが無料 Wi-fi を利用し、コーヒーを飲みながら作業できる空間の提供
チャネル: カフェ、スーパー、商業施設
顧客との関係: 店舗での接客、オンライン (ウェブサイト、アプリ、SNS)
収益の流れ: 飲食物の収益、オリジナルグッズの収益、店舗の加盟金
リソース: 店舗設備、人件費、ブランド商標
主要活動: 飲食物の販売、マーケティング、サプライチェーン管理
パートナー: 農業主、サプライヤー、機器メーカー、輸送業者
コスト構造: 店舗賃貸、人件費、設備費、広告費
ビジネスモデルキャンバスの基礎知識についてまとめました。メリットや構成要素を理解し、適切なビジネスモデルキャンバスを作成しましょう。常に「顧客」と「価値」の 2 つの柱を考慮しながら作るようにしてください。
ビジネスモデルキャンバスを共有するときは、ワークマネジメントツールを活用することをおすすめします。情報の点在化はスムーズな作業を妨げます。一元管理し、業務効率化を実現しましょう。
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