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ビジネスモデルを明確化するためのツールとして注目されている「リーンキャンバス」。この記事では、リーンキャンバスとは何かを分かりやすくまとめ、整理、共有するための最良策もご紹介します。
スタートアップ企業はもちろん、すでに展開中の事業とは別の新規事業を立ち上げるときにも重要となるのは、ビジネスモデルを明確にすることです。そのために効果的なフレームワークが「リーンキャンバス」。事業アイデアを整理し、変化のはげしい市場に柔軟に対応するために、リーンキャンバスを有効活用しましょう。
リーンキャンバスとは、ビジネスモデルを可視化するために用いられるフレームワークです。ビジネスモデルを図で表したもので、9 つの要素から構成されます (リーンキャンバスの構成要素については下記の『リーンキャンバスの構成要素 9 つ』で詳しく解説しています)。
ビジネスシーンで一般的に広く用いられるビジネスモデルキャンバスとは少し異なり、リーンキャンバスはとりわけスタートアップ向けに開発されたフレームワークで、顧客や課題、製品・サービスにフォーカスされています。
事業戦略のテンプレートを作成する (無料)リーンキャンバスは 2012年エリック・リースの著書『THE LEAN STARTUP (リーン・スタートアップ)』で提唱され注目を集めたマネジメント手法です。新しいサービスが次々に生まれ、そして世界へ発信されていくシリコンバレー発で、リース氏自身の起業体験も紹介されています。
誰でもすぐに企業できるこの時代ですが、大成功するビジネスもある一方で、毎年多くのスタートアップが失敗しているのも事実です。リーンキャンバスは、どうすれば顧客のニーズに寄り添い、事業を成功させることができるかを方法論としてまとめたフレームワークと言えます。この手法はその後、同じくシリコンバレーの起業家アッシュ・マウリャの『Running Lean』でも紹介され、さらに広まっていきました。
そもそもリーンにはどんな意味があるのでしょうか?
リーン (lean) は「無駄がない」を意味する英単語です。効率性を最適化したトヨタ自動車の生産方式を「リーン生産方式」と呼びますが、これはつまり効率的で無駄を省いた生産方式であることを意味します。
リーンキャンバスの目的は、顧客の視点からビジネスの価値を定義し、その実現性を検証することです。顧客やユーザーとビジネスのバランスを考えることで、自分本位な事業になることを避け、ビジネスモデルを可視化することができます。
記事: 成功する市場進出 (GTM) 戦略を立てる 9 ステップリーンキャンバスを構成する 9 つの要素は以下のとおりです。
自社の製品やサービスのターゲット顧客です。アーリーアダプターやペルソナなど、顧客となるターゲット層を明らかにしましょう。
ターゲットとなる顧客が抱えている課題です。上位 3 つほどに絞って書き出します。
このとき、顧客の課題が大量に出てくる場合はターゲットを絞り込めていない可能性があるので、もう一度考え直してみましょう。
競合他社と比べて、どういった要素で差別化を図るのか?そのポイントを明確に記します。市場に投入したときに、自社製品はどのような価値を提供できるのか、具体的に記載しましょう。
(CTA article) 記事: バリューチェーンとは?分析して競合他社との差別化を図る
顧客ユーザーが抱える課題に対する解決策です。前項の「独自の価値提案」で「何を提供するのか」を扱いましたが、このソリューションでは「どのように具現化するのか」を明らかにしましょう。
ターゲットとの接点をどのように作るのか、そのチャネルを具体的に示します。ターゲットへの経路は SNS の活用や営業戦略など、多様なチャネルを検討し、さまざまな方法でアプローチすることがおすすめです。
収益はどのように創出するのか、つまりマネタイズの方法です。”誰から”、”どのように” 収益を生み出すのかを書き出しましょう。イメージがつきやすいよう、できるだけ具体的に考えることが大切です。
製品・サービスを実際に市場に出すまでにかかる費用です。広告費や人件費、サーバー管理費など、何に対してどれくらいのコストがあるのかをできるだけ具体的に構造化して考えましょう。
定量的指標 (KPI) のことを指します。成長を計測する定点を KPI として定めることで、ビジネス目標への道筋が明確になります。進捗状況を見える化するために非常に重要な項目となります。
記事: 重要業績評価指標 (KPI) とは何か?競合にはない、自社の強みです。他社には真似できない、差別化のポイントとなるような圧倒的な優位性を記載しましょう。
記事: 競合分析の方法とその実例まずは一枚の紙に、前項で挙げた 9 つの要素を書き出して、言語化します。
リーンキャンバスフォーマットは、次のように配置しましょう。
紙の左側は「製品・サービスについて」。課題、解決策、主要指標を配置する
紙の右側は「市場について」。顧客セグメント、チャネル、競合優位性を配置する
上記 2 点の間、つまり紙の中央に「独自の価値提案」を配置する
下部左にコスト構造、右に収益の流れを配置する
リーンキャンバスは初期に設定するプランですので、埋まらない項目もあるかもしれません。もしアイデアが思い浮かばない箇所があっても、無理をして埋める必要はありません。その後考えが固まったら、その都度埋めていきます。
また、リーンキャンバスは短時間で書くようにします。細部にまでこだわるのではなく、まずは書き出してみて仮説検証していきましょう。市場の変化が激しい場合は、どれだけスピーディーに新規事業を立ち上げられるかが成功の鍵になる場合も多くあります。リーンキャンバスを素早く仕上げ、タイミングを逸しないようにします。
リーンキャンバスを作成する際は、前述した 9 つの構成要素の順番で書き出していきます。
ここで重要なのは、まず顧客のニーズ、つまり何が必要とされているのかという点から事業モデルを組み立てていき、最後に圧倒的な優位性を埋めることです。どこにも負けない優位性があるから新規ビジネスを始めるのではないところに注目しましょう。
では、リーンキャンバスのメリットとは、どのような点があるのでしょうか?
理解しやすい: たった 1 枚の紙に要点を書き出すリーンキャンバスは、誰が見てもそのアイデアを理解しやすい点がなによりのメリットです。複雑な文書ではなく、ステークホルダーの認識を合わせるためには最適と言えます。
共有しやすい: 1 枚で済むため、メンバーと共有しやすい点もメリットです。手早くシェアすることで、フィードバックも多くもらえます。
作りやすい: 何枚にもおよぶ計画書ではないので、素早く作成しやすい点もメリットと言えます。先述のとおり、スタートアップにとって素早さは成功の鍵と言っても過言ではありません。加筆修正、改善も可能なリーンキャンバスは短時間で作成できるツールです。
具体的なリーンキャンバスの事例を見ていきましょう。ここでは、Airbnb の例を解説します。
宿泊場所を提供するホストと旅行者であるゲストをアプリ上でマッチングさせるサービス「Airbnb」のリーンキャンバスはどのように構成されているのでしょうか?ホストとゲスト、双方の視点で考えます。
顧客セグメント: 空室を利用して稼ぎたい人 (ホスト)、安く旅行したい人 (ゲスト)
課題: 無駄になっている空室がある (ホスト)、ホテル代が高い (ゲスト)
独自の価値提案: 現在無駄になっているモノを利用して稼ぐ (ホスト)、安価に宿泊できる (ゲスト)
解決策: ホストとゲストをつなげるプラットフォームの構築
チャネル: アプリ、ウェブサイト、口コミ
収益の流れ: ホストとゲスト双方からの手数料
コスト構造: システム構築費用、運用費用
主要指標: 取引数、部屋数 (ホスト)、予約数、コンバージョン率 (ゲスト)
競合優位性: これまでになかった斬新なビジネス
リーンキャンバスについて解説しました。新規事業立ち上げ時に活用したいフレームワーク「リーンキャンバス」。ビジネスモデルを可視化するために有効なこのツールを用いて、事業を成功へと導きましょう。仮説を立て検証作業をスピーディーにくり返すには、PDCA サイクルで回すとより効果的です。
リーンキャンバスは一度書いて終わりにするのではなく、幾度となく見直し、検証を繰り返すことが重要です。そのためには、利害関係者がすぐにアクセスし、修正、加筆できるように保管しておかなければなりません。このとき、更新された情報はすぐに共有されるべきでもあります。インターネット上にはリーンキャンバスのテンプレートなどがすぐにダウンロードできますが、アナログ式に紙で行っていては、こういったプロセスをスムーズに行うことは難しいでしょう。Asana のようなクラウド型マネジメントツールで保管し、チームと常に共有している状態を保つことをおすすめします。
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