AI スタジオが登場: AI エージェントがあなたの代わりに雑務を処理するワークフローを構築しましょう。詳しく見る
バリューストリームマッピング (VSM) は、仕事の現状を分析し、将来的により効率的な状態を作り上げるための手段です。このプロセスを実行すると、自分の働き方を可視化できるため、改善の必要な領域を発見できます。この記事では、VSM の価値と独自のバリューストリームマップを作成する方法について説明します。
散らかったクローゼットを整理するときは、そこに入っている物をすべて取り出すことから始めるでしょう。すべてのアイテムを並べて見ると、何があるのか大体把握できるため、整理しやすくなるからです。
働き方改善も、目の前にすべてを並べてみないと効率の悪さに気付きにくいという点が似ています。これをワークフローについてもやってみると、以前は気付かなかった問題が浮上する場合があります。そこで活躍するのがバリューストリームマッピングです。
この電子書籍では、ワークマネジメントとは何かを解説し、ビジネスにどう役立つかをご紹介します。
バリューストリームマッピングは、制作プロセスを図示、分析するために使うフローチャート式のメソッドです。VSM は、プロジェクトの各段階から無駄を省いて顧客価値を高めるアジャイル手法、リーンプロジェクト管理の主なコンポーネントです。
バリューストリームマッピング (VSM) には基本となるステップが 4 つあります。
現在のプロセスをマッピングする
無駄を見つけて取り除く
改善された新しいプロセスをマッピングする
新しいプロセスを導入する
バリューストリームマッピングでは、以下のような領域に改善の余地が見つかる場合があります。
プロセスフロー
リードタイムとプロセスタイム
機器の信頼性
原材料 / 在庫
制作フローに、作り過ぎや管理ミス、プロジェクトの不備といった無駄が見つかったら、そうしたボトルネックを管理することにより、プロセスをスムーズに進めることができます。
仕事が進むワークフローを構築する方法バリューストリームマッピングを使用すると、ビジネスモデルを大きく改善できる見込みがあります。しかし、VSM が自分のニーズに合わない場合は、時間とリソースを投資するべきではありません。バリューマッピングは、以下の場合に効果を発揮します。
エンドツーエンドの作業プロセスを改善したい場合
プロセスの中で山積みになっている在庫を特定したい場合
プロセスを最適化する機会を見つけたい場合
プロセス固有の複雑さについて知りたい場合
プロセスで使用されている IT システムを理解したい場合
カスタマーサービスチャンネルの効果を評価したい場合
プロセスの健全性を視覚化したい場合
プロセスを戦略的に見直したい場合
ご覧のとおり、バリューストリームマッピングを作成すると、作業プロセスを構成する数多くの要素についてインサイトを得ることができます。しかし、解決したい問題が情報や製品、タイムフローなどの要素には関係のないものであれば、バリューマップは役に立たない場合があります。
バリューストリームマッピングには基本的なステップが 4 つありますが、プロセスを 9 つのステップに分割すれば、手抜かりなくしっかりと準備ができたと感じられます。VSM プロセスの最初の 5 つのステップでは、プロジェクトの計画に集中します。プロジェクト計画があると、インサイトが深まるほか、プロセスの改善につながる可能性もあります。そうすれば、必要なコンテキストがすべて揃った状態で VSM の 4 つの基本ステップを開始できます。
Asana でプロジェクトを計画するプロジェクトを円滑に進めるために、SaaS型プロジェクトマネジメントツールを活用しましょう。WBS 作成や工数管理もできる Asana なら、すべての仕事を 1 か所に整理できるから、業務効率が向上します。
バリューストリームマッピングは、定期的なワークフローメンテナンスの重要な一部ですが、それを使ってすでに把握しているチームや顧客の問題を解決することもできます。たとえば、顧客の需要が利用可能な在庫数よりも多いことに気付いたとしましょう。問題に気付いていても、その原因が不明なときは、それをチームと共有し、VSM を使うことによって解決策を見い出します。
【ヒント】この最初のステージでは、ブレインストーミングを行い、また質問をすることにより、社内と社外両方について効率の悪い点を特定します。顧客とチームメンバーの立場になって考えれば、問題点を洗い出せます。
バリューストリームをマッピングし、細かく分析し、改良した制作プロセスを導入するには、意志が強く、集中力の高いチームの協力が必要になります。セールス部門、オペレーション部門、カスタマーサービス部門、デザイン部門のメンバーで構成されるクロスファンクショナルチームを結成すれば、プロセスタイムを最適化し、顧客のニーズを満たすのに必要なスキルと観点が揃います。解決したい問題によっては、これらすべてのチームから代表を集める必要はないかもしれません。メンバーは賢く選出し、可能なかぎり効率的な VSM チームを作りましょう。
【ヒント】VSM チームにエグゼクティブとサポート役のメンバーを採用することにより、社内の課題に対する可視性を高めます。社外メンバーの意見が欲しいときは、サプライヤーなど、他の関係者をグループに招待します。
バリューストリームマッピングのエクササイズは、それ自体がプロジェクトになるため、スコープを決定する必要があります。プロジェクトスコープを決定しないと、どれだけの作業プロセスをマッピングすればよいのか判断がつきません。スコープが決まっていないと、後でプロセスの無駄を特定し、除去するのが大変になります。
スコープ管理計画テンプレートを作成【ヒント】VSM は、一度に一つの製品にのみ使用します。製品のライフサイクル全体をマッピングするのか、プロセスの特定のステップだけに集中するのかを決めます。ソフトウェア製品を制作するのであれば、最初の機能リクエストから顧客への納品までのプロセスをマッピングするとよいでしょう。顧客が製品を受け取ってから発生し得る条件付きのステップは省きます。
VSM のスコープを決定しましたので、マッピングを開始します。バリューストリームのシンボル (下に説明しています) を使って、作業アクティビティの間で情報がどのように流れるかを示します。制作プロセス全体をマッピングする場合は、丸いマップが出来上がります。制作プロセスの最終段階で、再びプロセスの最初のステップに戻ります。
【ヒント】バリューストリームマップのどこから始めればよいのかわからないという方は、顧客とサプライヤー間に入ってリクエストを承認する立場にいるチームメンバーから始めるとよいでしょう。マップは、3 つの部分に分けて可視化することもできます。マップの一番上の部分を情報のフローに、真ん中の部分を製品のフローに、一番下の部分を時間のフローに使います。
バリューストリームのイラストが完成したら、関連する評価指標を追加して、このエクササイズから最も正確なインサイトを得られるようにします。マップだけでも、会社の製造プロセスやソフトウェア開発といった特定の情報を可視化できますが、そのイメージをプロセスの全ステップの間で時間や量、質といった要素を比較するためのデータボックスと組み合わせる必要があります。
マップには以下のようなデータポイントを追加できます。
各ステップに用意されている在庫の数
ユニットごとのサイクル時間
移動時間
各ステップの実行に必要なチームメンバーの数
破棄された製品の数
各作業バッチで処理される製品の数
タクトタイム (顧客のニーズを満たすのに必要な製品の制作速度)
【ヒント】マップに含めるデータは、業界やマッピングするプロセス、解決したい問題によって変わりますが、ほとんどのデータは以下 3 つのカテゴリに入ります。
オフィスまたはサポート関連のデータ
製造またはショップ関連のデータ
サプライヤーまたは社外プロセス関連のデータ
どの制作プロセスにも、明確なタイムラインは欠かせません。また、プロセスの遅延は、ワークフロー全体を狂わせます。バリューストリームマップを 3 分割した一番下の部分を時間のフローにあてて、そこでリードタイムとサイクルタイムの段がそれぞれ 1 つずつあるタイムラダー (はしご) を使います。このラダーを使うと、リードタイムとサイクルタイムが期待通りの速さであるかどうかをより的確に把握できます。
リードタイムとは、あるタスクがワークフローに入った時点から、チームがそのタスクを完了するまでにかかるトータルの時間のことです。リードタイムには、実際の生産ステージに至るまでのすべての業務プロセスが含まれます。
サイクルタイムとは、リードタイム全体のうち、実際にタスクが完了する部分の時間です。付加価値時間と呼ばれることもあります。
リードタイムは、各工程の前に利用可能な在庫のストックを製品の顧客需要で割ることによって算出します。たとえば、出荷工程に入る前に 4 つの製品があり、その製品に対する顧客の需要が 1 日あたり 2 つである場合、リードタイムは 2 日となります。
【ヒント】リードタイムは、在庫管理および顧客満足度と密接に関係しています。リードタイムが長すぎると、在庫を補充するタイミングを予測しにくくなります。バリューストリームマップを使用すると、製品の納品に遅れてしまう前に、リードタイムを最適化できるので便利です。
現在のフロー状態を示すマップを作成していくと、最適化の必要な領域が見えてくるはずです。バリューストリームマップを完成させるには、プロジェクトデータを記入して、無駄のある領域を見つけやすくします。
しかし、無駄のある領域が明らかな場合でも、マップの分析に集中する時間を確保しておくことをおすすめします。リーン管理では、以下のような領域に無駄が見られることがあります。
作り過ぎの無駄 (不必要な機能)
在庫の無駄 (バックログの管理ミス)
動作の無駄 (タスクの切り替え)
不良を作ることの無駄 (技術的負債)
加工し過ぎの無駄 (高価なツール)
待つことの無駄
運搬の無駄
足並みが揃わないチームによる無駄
【ヒント】マップを分析する最適な方法として、特定した無駄な領域に対してカイゼンバーストを実施します。「カイゼン」という用語は、日本語の「改善」が「継続的改善」の文脈でグローバルに使われるようになったものです。カイゼンバーストを行うことにより、将来の状態バリューストリームマップにおいて価値を付加するためのアイデアを生み出します。
これで、将来の状態バリューストリームマップを描く準備が整いました。このマップは、現在のマップに似て見えますが、改善の必要な領域については「カイゼン」の要素が含まれます。かんばんソフトウェアを使用すれば、必要なときにリソースをプルでき、情報のフローを改善できます。
将来の状態マップは、そのプロセスによって異なるシンボルを使って表します。以下のそれぞれのプロセスを視覚的にシンボル化したものは、そのさらに下に紹介する VSM シンボルマップを参照してください。
スーパーマーケット: かんばん方式で在庫を管理する場所と捉えることができます。サプライヤーによって必要な在庫が補充されたら、顧客はすぐにそれを入手できます。
制作のかんばん: 製品のニーズを表し、下流工程にパーツを提供します。
素材回収のかんばん: オペレーターにパーツをスーパーマーケットからプロセスに移動する指示を出します。
シグナルのかんばん: スーパーマーケットの在庫が少なくなっているときに使用され、指定された数のパーツを製造する合図を出します。
かんばんポスト: かんばんシグナルを収集するための場所を意味します。通常は、スーパーマーケットの近くにあります。
素材プル: 保管されている在庫をスーパーマーケットから取り除くことを意味します。
連続プル: 指定されたチームにカスタムオーダーを作る指示を出すことにより、各プロセス間でスーパーマーケットに在庫を保管する必要性をなくします。
【ヒント】下のバリューストリームシンボルマップを使って各シンボルの絵を確認し、将来の状態マップに適切に配置します。将来の状態マップは、素材のフローを簡素化することが目的ですが、シンボルを追加したことにより、現在の状態マップより将来の状態マップの方が込み入って見えることがあります。しかし、心配は要りません。
VSM プロセスの最終ステップでは、将来の状態マップから得たソリューションを作業プロセスとして実装します。ここで、マップの分析結果が効果を発揮します。
クローゼットの整理と同じで、散らかりを整頓するのは大変な作業のように感じます。しかし、新しくできた実用的なスペースの使いやすさを実感したら、プロジェクトの目的が明確になります。無駄を特定し、無駄の少ないソリューションを発見するのは容易なことではありませんが、最終的にはワークフローの効率が上がり、顧客の満足度も高まります。
ワークフローを構築することで、チーム間の認識のずれをなくし、スムーズな共同作業を実現します。Asana のワークフローは、毎日使うツールと連携して仕事を一元管理できるので、仕事の効率・生産性も向上します。
Asana のワークフローが選ばれる理由とは?下のシンボルは、各プロセスにおける情報のフロー、作業アクティビティ、そして改善の必要な領域を意味します。VSM ソフトウェアを使用すると、こうしたシンボルをすぐに利用できます。
以下は、現在の状態マップを示した VSM の一例です。このマップは、製品またはサービスがサプライヤーから社内の制作チェーンを通って顧客に届く一連のプロセスをまとめたものです。
バリューストリームマップは、チームメンバーが担当する制作管理のある中央の一番上からスタートします。このメンバーは、顧客からの依頼、すなわち注文を承認し、その依頼をサプライヤーに送ります。顧客のニーズは、サプライチェーンと制作チェーンの両方にフィードするため、このバリューストリームマップの例は円を描くように進行していきます。
継続的改善を目指すのであれば、自宅を管理するのと同じように、プロセスのメンテも普段からしっかりと行いましょう。VSM は面倒に感じるかもしれませんが、きちんと行えば、無駄が少なく、リードタイムの短い効率的なワークフローが出来上がります。
現在のバリューストリームと将来のバリューストリームのマッピングは、適切なソフトウェアを使えば簡単に行えます。バリューストリームマップを Asana と連携させれば、すばやくソリューションを導入し、顧客を満足させる仕事を続行できます。
Asana のワークフローをチェックする