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「有毒な生産性」は、今まで以上に蔓延しており、私たちの体と心を傷つけています。この記事では、仕事のバランスを取り戻して、有毒な生産性の悪循環に終止符を打つための具体的なアクションを 6 個まとめて紹介します。
ナレッジワーカーの 40% は、仕事でよい結果を出すには、燃え尽き症候群を患っても仕方ないと考えています。しかし、無理やり生産性を高めても長続きはしないでしょう。長期間にわたって無理をすると、自分がこなせる仕事量によって自分の価値を評価するようになります。散歩に行ったり、読書をしたり、のんびり夕食を食べたりと、いつも楽しんでいたことに時間を「無駄にしている」、と罪悪感を感じるようにもなってしまいます。
そんな心の状態は、有毒な生産性が引き起こすものです。心当たりがあるという方、それはあなただけではありません。そして、この問題は改善できます。
有毒な生産性とは、常に、職場だけでなく、生活のあらゆる面において、物事を生産的に行おうとする意欲のことです。多くの場合、肉体的および精神的な健康を犠牲にしてでも、もっともっと結果を出そうと、不健康なほど無理をしているときに起こります。友人と散歩に出かけたり、同僚とコーヒーを飲みながらお喋りをしたりするなど、何かを単純に楽しむということができないと感じるようになってしまう場合もあります。それどころか、やることすべてが、大きな目標の達成につながるステップでなければいけなくなってしまうのです。
有毒な生産性は、日常のアクティビティから楽しさを奪い取り、ナレッジワーカーが長期間無理に働く原因となります。長期的には、燃え尽き症候群やうつ病、肉体的および精神的な問題を引き起こす場合があります。
現代社会では、生産的であることが高く評価されます。ハッスル文化 (仕事中毒)を見れば分かるように、目標を達成しようと、毎日休まず働くことが美化されています。Elon Musk 氏のようなビジネス界の大物が、「1 週間に 40 時間だけ働いて世界を変えた人物など存在しない」とツイートする一方で、SNS のインフルエンサーは、理想的で生産的なルーチンを説明した動画や画像を投稿しています。そうしたメッセージがあちこちで発信される中では、一生懸命に働かないことに罪悪感を感じやすくなってしまうでしょう。
また、有毒な生産性は、不安定な時期にもよく見られます。臨床心理学者の Kathryn Esquer 氏によると、生産的に働いているときは心配事を忘れ、一時的に幸福感も感じられます。「私たちは、自分の置かれた環境の中で、コントロールできないストレス要因や脅威に直面したとき、家の掃除をしたり、仕事のプロジェクトで好成績を出したりするなど、今置かれている環境の中で自分がコントロールできる小さな事柄に集中しているということが多々あります」、と Esquer 氏は言います。問題は、生産的に働くことは、私たちが感じるストレスや不快感に対する応急処置でしかないという点です。
たとえば、コロナ禍を例に挙げます。ロックダウン中に時間がたくさんあった人たちは、休む時間を取らずに、サワードウブレッドの焼き方を学んだり、イタリア語会話を学んだり、新しいプログラミング言語を修得したりしていました。世界規模で発生したパンデミックの最中ですら、私たちは、そんな状況に対処するために必要な余裕を確保するのではなく、普段よりも頑張ろうとしていたのです。
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ある程度の生産性は健康的であるため、仕事に対する姿勢が体の毒になっていることになかなか気づかない場合があります。有毒な生産性は人によって表れ方が異なるため、以下の注意すべき危険信号を参考にしてください。
普段から残業している。 大きなプロジェクトを完了させようと、たまに数時間の残業をすることは珍しくありませんが、それが習慣になってしまうとそれはすぐに有毒になります。たとえば、週末に働いたり、仕事に「追いつく」という目的で、1 日が実際に始まる前に、普段よりも早くログオンしたり、夜遅くまで働いたり、休憩中にまで仕事のチャンネルを確認したりといった例が挙げられます。有毒な生産性と働き過ぎは違いますので、注意してください。自ら残業をすることは有毒と言えますが、必要だからやるという場合はおそらく働き過ぎでしょう。
妥当な量のタスクを完了させているにも関わらず、仕事が十分にできていないことに罪悪感を感じる。有毒な生産性に苦しんでいる人は、合理的な範囲を超えて、驚くほどの量の仕事を完了させようとします。彼らは、自分に対して非現実的なことを期待し、予定から遅れると罪悪感を感じます。
目的が明確なアクティビティしかやろうとしない。 有毒な生産性に苦しむ人の多くは、特定の目標を達成することにつながらないアクティビティを時間の無駄に感じます。友人や家族と時間を過ごしたり、リラックスしたり、その瞬間を大切に過ごすといった、「非生産的」なアクティビティを避けようとするでしょう。
セルフケアをなおざりにする。 セルフケアは時間の無駄だと思うことがあれば、それは有毒な生産性のせいかもしれません。たとえば、休憩することや体にいい食事を作ること、エクササイズをすること、大切な人たちと時間を過ごすことなどがセルフケアの例として挙げられます。有毒な生産性に苦しんでいる人は、働く時間を延ばそうと、わざと食事を取らなかったり、トイレに行くことや水を飲むことまでをも後回しにする傾向があります。
慢性不安やうつ病を患っている。 常にスイッチを「オン」にしようとすると、精神的な健康に大きな負担がかかります。やるべき仕事がたくさんあることをいつも不安に思ったり、十分働いていないのではないかと心配になったりします。また、うつ病もよく見られる症状であり、特に有毒な生産性が原因で、大切な人たちや以前は楽しんでいたアクティビティから気持ちが離れてしまっていると、うつ病に陥りやすくなります。
燃え尽きていると感じる。 長期間に渡って頑張りすぎると、燃え尽き症候群になってしまうこともよくあります。その兆候は人それぞれですが、一般的な症状として、極度の疲労感、士気の低下、頻繁な体の不調などが挙げられます。燃え尽き症候群は誰にでも起こり得ることで、仕事だけに関連するものでもありません。たとえば、親になったばかりの人や介護をしている人もよく燃え尽き症候群の症状を訴えています。
不安定な状況では、不安な気持ちを生産的に活動するためのエネルギーに変えようとしがちですが、そのやり方では、いずれ燃え尽きて、疲れ切ってしまうでしょう。人間である私たちは、休憩を取ったり、自分の気持ちと向き合ったり、大切な人たちと過ごすための時間が必要です。その時間を確保すれば、長期的には今と同じかそれ以上のことを成し遂げられるでしょう。
ありきたりな表現にはなりますが、生産性は、短距離走ではなく、マラソンのようなものです。以下に、有毒な生産性の悪循環を断ち切って、チームのために仕事のバランスを取り戻すための方法を 6 つ紹介します。
有毒な生産性は、長時間にわたって頑張りすぎる原因になります。この悪循環を断ち切るには、仕事と生活の区切りをつけて、自分の時間を取り戻す必要があります。
そうした区切りをつけることは、特にリモートワーカーにとって重要です。当社の調査によると、ナレッジワーカーの 37% は、リモートで働くとき、仕事を始める時間と終える時間がはっきり決まっていないと答えています。その結果、社員の 38% は、リモートワークをする場合に勤務時間外にメールをチェックする時間が増え、35% は、プライベートの時間に仕事のことを考える時間が増えています。
仕事と生活の区切りは以下の方法でつけられます。
チーム (または自分) の始業時間と終業時間を明確にする。そうすると、働くべき時間とオフの時間を全員が把握できます。
マネージャーとして、区切りの付け方を主張する。 勤務時間外のメッセージのやり取りを避け、休暇を取り、チームにも同じことをするよう働き掛けます。
すぐに返信が来ないことを一般化させる。マネージャーの 50% と 42% の一般社員は、通知がきたらすぐに返信しなければいけないと感じています。マネージャーは、応答時間についてより現実的な期待値を設定し、チームが勤務時間外には完全にスイッチをオフにできるようにするとよいでしょう。
有毒な生産性は、仕事の目標や期待事項が現実的でないときによく発生します。その結果、勤務時間を増やさなければいけないとプレッシャーを感じるほか、のんびり仕事をしたり、遅れたりすると、罪悪感を感じます。
これに対処するには、一定の時間内に合理的に達成できると思う目標を立て、その達成を目指します。その方法を以下に紹介します。
SMART な目標を立てる。SMART な目標とは、具体的 (Specific)、測定可能 (Measurable)、達成可能 (Achievable)、現実的 (Realistic)、かつ期限がある (Time-bound) 目標です。このフレームワークを使うと、実際に達成できる合理的な目標を立てられます。
自分に正直になる。目標を立てるとき、つい理想的な自分を目指そうとしてしまいます。現在の自分と向き合い、ヘトヘトにならずに達成できる現実的な目標を立てましょう。
休憩時間を設ける。休まずにずっと働いていられる人はいません。目標に向けて取り組むスケジュールを組むときは、体力を充電しながら取り組めるよう、スケジュールに余裕を持たせて十分な休憩時間を確保しましょう。
目標を使って仕事に優先順位を付ける。何もかもが緊急で重要ということはありません。目標をうまく活用すれば、今すぐやるべきタスクと後回しにできるタスクを区別できます。具体的な目標を立てると戦略的なアプローチでタスクに優先順位を付けられるため、タスクの一部を先送りにしたり、他のタスクを他の誰かに割り当てたり、重要でないタスクを To-Do リストから削除したりすることで残業を避けられます。
誰でも休暇は必要です。休暇をとる期間を予定しておけば、必要なときに確実に休暇をとることができます。休暇をとることは、直感に反するようですが、実際には集中力が上がり、もっと創造的な考えができるようになるため、長期的には生産性が向上します。
認知神経学者の Sahar Yousef 博士によると、戦略的な休暇は、働きすぎや職場での燃え尽き症候群を防ぐ最適な手段です。彼女は、休暇を以下 3 つのカテゴリーに分ける 3M フレームワークを推奨しています。
マクロ休暇: 月に半日または 1 日。ハイキング、日帰り旅行、家族と過ごすなど。
メソ休暇: 週に 1~2 時間程度。音楽のレッスン、スポーツの練習、長い散歩など。
マイクロ休暇: 1 日に複数回、数分間。ストレッチや瞑想など。
チームに 3M フレームワークを取り入れるには、チームの各メンバーに、どの種類の休暇は取ることができていて、どの種類をもっと優先する必要があるかを確認するよう働きかけます。そして、各チームメンバーに、マイクロ、メソ、マクロそれぞれの休暇を取るスケジュールをカレンダーに入れてもらいます。仕事の後にハイキングに行ったことや週末旅行を計画していることなど、自分自身がどのような休暇を取ってメンタルと体の健康を守っているかをチームに話すことによって、模範を示してもよいでしょう。
記事: Asana のリーダーに聞く、模範となるリーダーシップの取り方
有毒な生産性を生み出す悪循環に陥ると、分刻みに目的がないといけないように感じてしまいます。ただ自然の中でランニングをしようとは思わず、10 マイル走って、マラソンのトレーニングをしようとします。単にファンタジー小説を楽しもうとはせず、自己改善の本を読んだり、1 年に小説を 50 冊読む目標を達成しようとします。
生産性のサイクルを向上させようとする代わりに、何もせず、意図的に生産性を下げる時間を確保します。それは、何らかの形で自分を改善するための時間ではなく、ただ単に普段の自分として過ごすための時間です。椅子に座って音楽を聞いたり、瞑想したり、散歩に行ったり、映画やテレビ番組を見たりと、積極的に何かを達成しようとしていないときは、自分の時間を確保しましょう。
有毒な生産性は、放置しているネガティブな感情の表れであることが多いです。この悪循環を完全に食い止めるには、仕事量が増えてしまう原因となっている心の底の考えや感情を突き止める必要があります。ここでの狙いは、ネガティブな感情を消し去ることではありません。むしろ、超生産的に働いてその感情を無視しようとするのではなく、感情と上手に向き合う健康的な方法を習得することです。
たとえば、有毒な生産性を引き起こす感情には、以下のようなものがあります。
失敗への恐れがある
自分には価値がないという思い込みや低い自己評価
十分な成果が出せていないことに関する罪悪感
仕事の不安定感
自分を他の人と比較している
世界の出来事や自分自身の生活に関するストレス
メンタルヘルスは、体の健康と同様に重要であり、誰でも時折問題を抱えることがあります。足首を捻挫したら医者に行くのと同じように、ネガティブな感情が私生活に影響を及ぼしているときは、メンタルヘルスの専門家に相談することが重要です。
記事: 心の知能を今日から優先するべき理由
スマホを所有するというのは、お尻のポケットにコンピューターを持ち運んでいるようなものです。ショッピングモールへの行き方を知りたいときはとても便利ですが、仕事と生活のバランスを維持する上では便利とは言えません。職場から通知やメールが入って電話がいつも鳴っていては、勤務時間外でも仕事から完全に抜け出すことは不可能です。さらに同僚からのメッセージを見ると、自分が働いていないことに罪悪感を感じやすくなってしまいます。
スマホは SNS への入り口でもあります。SNS には、他の人の生活のハイライトだけが表示されるため、Instagram や TikTok、LinkedIn の投稿を見ていると、他の人はみんな自分よりも生産的で、成功していると感じてしまいます。このように、自分を不十分と感じることも、有毒な生産性を引き起こす原因となります。
以下に、スマホから一旦手を休める方法を紹介します。
完全に集中したいときは、スマホをカバンや引き出しに入れて、視界に入らないようにする。また、散歩に行くときはスマホを家に置いて出かけるとよいでしょう。
「サイレント」モードをオンにしたり、アプリの通知を無効にしたりする。
寝室など、家の一部にデバイスを持ち込まない場所を作る。
メッセージアプリのようなアプリや勤務先のメールアカウントをスマホから削除する。
ヘトヘトになるまで働かなくても、職場でよい成績を出すことはできます。有毒な生産性の悪循環を断ち切れば、長期的には業績がアップしていくでしょう。毎日「休まずに働く」ようなことはせず、思いっきり活躍するのに必要なバランスを維持しながら働きましょう。
限られた時間の中でもっと働こうとする代わりに、プロセスを合理化することにフォーカスすれば、仕事量を減らし、本当に大切な仕事に集中できます。Asana のようなワークマネジメントツールは、タスクに関するコミュニケーションや情報の検索、アプリの切り替え、変更される優先事項の管理、ステータス更新の追跡といった、「仕事のための仕事」と呼ばれるアクティビティを削減する非常に優れた手段です。それができれば、毎日、大切な仕事を済ませて、仕事が終わった後にはスイッチをオフにする時間を確保できます。
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