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タスクのバッチ処理 (タスクバッチング) とは、似ているタスクをまとめて一度に片づける生産性アップ手法です。このテクニックでマルチタスクを避け、タスクに集中できる時間を増やすことができます。タスクのバッチ処理で先延ばしを減らし、生産性を上げ、高品質な成果を生む方法をご紹介します。
タスクを確認するために月曜日の朝にメールアプリを開いたとします。受信トレイはぐちゃぐちゃで、承認リクエストがたまっていて、まず何から手を付ければいいのかわからなくなってしまいました。
そんな経験があるのはあなただけではありません。まずメールアプリをチェックして受信トレイの一番上にあるメールを読むというのは、よくある一日の始め方です。しかし、これはあなたにメールを送った人たちにとってはありがたいことかもしれませんが、あなたの時間の使い方としては効率的とはいえないかもしれません。そこでタスクバッチングを行うことで、完了すべきタスクを効率的な方法で整理し、あなたのスタイルで 1 日を始めることができます。
タスクのバッチ処理 (タスクバッチング) とは、似ているタスクをまとめて一定の時間内で片づける生産性アップ手法です。この手法の主な目的は、コンテキストスイッチ、つまりタスク間の精神的な切り替えを防ぐことにあります。コンテキストスイッチというという用語は、もともとは複数のプロセスを一度に実行できる OS の仕組みを示すコンピューター用語でした。スマホのアプリを 2 つ起動して、その 2 つを切り替えるようなものです。あなたの脳も、2 つのタスクに集中するような場合に同じようなプロセスを取ります。しかし、私たちはコンピューターではなく人間なので、コンテキストスイッチには時間と精神的な労力がかかります。タスクのバッチ処理を行うと 1 日のコンテキストスイッチの回数が減ります。タスクを来た順番で片づけていくのではなく、タスクのバッチ処理で似たようなタスクをまとめることで、似ているプロジェクトや作業に関するタスクを一度に完了できます。
タスクのバッチ処理ではタイムブロッキングの考え方を利用します。この 2 つの生産性アップ手法は本質的には似ていますが、いくつか異なる点があります。
タスクのバッチ処理とは性質の似ているタスクや同じプロジェクトのタスクを一つの時間枠にまとめてグループ化することです。たとえば、メールが届くたびに返信するのではなく、まとめて一度に返信するようなやり方がタスクのバッチ処理です。
タイムブロッキング (タイムバッチング) では、一日の一定時間をブロックして、仕事に集中できるようにします。先ほどのメールの例だと、毎日 1 時間メール返信用の時間を確保 (ブロッキング) できます。
この 2 つの手法を組み合わせることで、生産性を次のステップへと高めることができます。似たようなタスクをグループ化し、そのカテゴリのタスクを完了するための時間をブロッキングしましょう。
タスクのバッチ処理が効果的な理由は、マルチタスクがなくなり、脳が一度に一つのタスクに集中できるためです。カリフォルニア大学バークレー校講師兼認知神経科学者である Sahar Yousef 博士は、マルチタスクは幻想であると述べています。Asana のフォーカス & フローイベントでも、Yousef 博士は以下のように話しています。
タスクのバッチ処理では、マルチタスクを避けるために特定の 1 種類のタスクに取り組む際の集中力を利用します。バッチとしてまとめられたタスクに取り組んでいる間は、そのグループに含まれないタスクのことを考えずに済みます。異なるタスクのために頭を切り替えるには時間とエネルギーがかかるので、この切り替えをなくすことで効率的に働けます。いったん気が散るとまた集中するのに平均で 23 分かかるといわれており、タスクのバッチ処理を行うことでその「切り替え税」を払わずに済むというわけです。
「人間の注意力と集中力の美しさは、それが貴重で有限な資源であることにあります」と Yousef 博士は語ります。「私たちの注意力は無限ではありません。だからこそ限りある資源をどのように使うのか、十分注意しなくてはならないのです。」
記事: 職場で集中力を上げる 4 つの方法タスクのバッチ処理は To-Do リストの確認や時間管理能力の改善に役立つシンプルな手法です。ここでは、上手なタスクのバッチ処理の手順をご紹介します。
その日にやるべきことをすべて確認し、似たようなタスクをまとめてグループ分けしましょう。たとえば、作業の難しさやプロジェクト、タスク完了に必要なアクションの種類などでタスクを整理します。
アドバイス: 一日を通して仕事を切り替えるのに苦労しているなら、GTD メソッドを試してみましょう。このテクニックを使って頭の中にある情報を外部の情報源へと移すことで、やるべきことをすべて覚えておくためにエネルギーを消費することがなくなります。
同じようなタスクをまとめ終わったら、今度はそのタスクを一度に済ませるための十分な時間を確保しましょう。必要に応じて、カレンダー上にその予定を追加しましょう。そうすることで予定が守りやすくなるだけでなく、あなたがいつ空いていて、いつ取り込み中なのか、チームに知らせることができます。
たとえば、メールや Slack の確認に約 30 分かかるとします。タスクのバッチ処理手法を使う場合は、1 日の始まり、中間、終わりの 30 分間をブロッキングして、そういった作業ができるようにします。
アドバイス: タイムブロッキング反対派の主な意見として、いつでもチームに対応できる状態でありたいというものがあります。その考え方はすばらしいものですが、タイムブロッキング手法を取り入れるとチームに対応できなくなるわけではありません。チームはタイムブロッキングによって最適なタイミングで連絡が取れるので、あなたもその対応に集中できます。タイムブロッキングを行う際は、チームミーティングやお昼休みも考慮することを忘れずに!
これは必須ではありませんが、ブロックの色分けを行うことでおおよそどんな 1 日になるのか一目で把握できます。会議、集中タイム、1on1 ミーティングなどのブロックを色分けして、その日を簡単に確認できるようにしましょう。
記事: 最高の成果を出すためのタイムマネジメントのコツ、タイムマネジメント術、クイックウィン (すぐできる改善) 18 選生産性を向上させるためのライフハックを色々試してみたいとお考えなら、タスクのバッチ処理を試す価値として以下のようなものがあります。
ディープワークとは、難しい事柄を簡単に吸収したり、高品質な成果物を短い時間で作り上げたりといったことを可能にする、集中力が最高に高まっている状態です。ディープワークという言葉は、ジョージタウン大学でコンピューターサイエンスを研究する Cal Newport 教授によって作られました。Newport 教授は著書の「Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World」(大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法) の中で、注意が散漫することがなく集中し、脳が潜在能力をフル稼働させている状態をディープワークと定義しています。
タスクのバッチ処理により脳は気が散るものを排除し、目の前のタスクだけに集中できるので、脳が持つ力を最大限に使って仕事に取り組むことができます。そうすることでディープワークに入りやすく、またその状態を維持しやすくなります。
記事: 仕事でフロー状態を活用する 6 つのコツコンテキストスイッチは集中の妨げになるだけでなく、バーンアウトのリスクも高めます。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究で、継続的に中断が入るような環境で働くことは、ストレスやフラストレーションを高めるということがわかっています。頻繁なコンテキストスイッチは脳のコルチゾールの分泌量を増やし、精神的疲労やバーンアウトの原因となる可能性があります。
1 日をハイキングのように考えてください。集中しているときはひたすら道を進み続けることができるでしょう。気が散ると、立ち止まって道を外れ、花を見たりするかもしれませんが、それでもまた戻って前に進み続けなければなりません。タスクを切り替えるときの脳もこれと同じです。頻繁に道から外れていると、これまでどのくらい進んだのかもよくわからなくなってしまうでしょう。
仕事においても、常にマルチタスクをしていると、どのくらいタスクを完了できたのか把握しにくくなります。タスクをブロックに分けることで、あなたもチームメンバーも、あなたがどんな仕事をしたのか明確に把握できるようになります。成果を目に見える形で確認することにより、一日を通して達成感が得られ、努力の成果を実感できます。
記事: 働き過ぎの人やチーム必見、仕事とプライベートのバランスを取り戻すための戦略すべての仕事を 1 日で終わらせることに苦労している場合も、仕事の処理や先延ばし防止にタスクのバッチ処理が役立ちます。仕事が締め切りに間に合わないことが問題なら、タイムブロッキングを行うことで緊急性を高められます。そうすることで難しい仕事も先延ばしにせず片づけることができ、結果的に後でゆっくり自由な時間を楽しめます。
慣れないうちは、タスクのバッチ処理は難しいかもしれません。タスクのバッチ処理手法を最大限に活用するためのコツをいくつかご紹介します。
精神的な状態がピークに達するタイミングは人によって異なります。朝の早い時間のほうが働きやすい人もいれば、ランチの後にエネルギーが湧いてくる人もいます。あなたにとってのピークがいつであっても、ブレインストーミングや戦略策定など、精神的な労力の大きいタスクはそのピークの時間帯に予定するようにしましょう。
タスクに集中しているときは通知を切り、デスクトップ上の無関係なアプリは閉じ、サイレントモードをオンにしましょう。スマホの通知も切って SNS からはログアウトしましょう。画面に通知が表示されたときの小さな通知音でさえ、集中の妨げになります。ディープワーク促進のために、集中の妨げとなるものはできる限り減らしましょう。
作業環境そのものが気が散る環境なら、デスクを片づける時間を取り、効率よく働ける環境をセットアップしましょう。
記事: 集中する方法: 集中しにくい環境で物事を成し遂げるためのコツ集中タイムを設ける場合は、それをチームにも知らせましょう。Slack でステータスを設定したり、メールの自動返信を設定したり、カレンダー上で予定を公開したりといった方法があります。チームに知らせておけば、緊急でないかぎり邪魔すべきでないとわかってくれます。メールや Slack、非同期タスクの割り当てなど、さまざまな連絡手段も伝えておきましょう。いつごろ返事が期待できるのか示しておくのもおすすめです。たとえば、メッセージは受信できるが返信は遅くなる可能性があることを Slack のステータスに書いておくのもいいでしょう。
記事: 非同期コミュニケーションに関する誤解ワークフローに適切なツールがあれば、生産性も高まります。Asana のようなワークマネジメントツールを使うことで、仕事が管理しやすくなり、誰が何をいつまでにする必要があるのか、正確に把握できます。