電化製品でもスマホのアプリでも、製品やサービスは継続的に改善されていくものです。その継続的な改善を達成するために用いられる方法に「反復型プロセス」があります。この記事では、反復型プロセスとは何か、そのメリットとデメリット、非反復型プロセスとの違いなどを解説します。
更新: この記事は、アジャイルと反復型開発の違いに関する記述を含めて 2023年 6月に改訂されました。
「反復型プロセス」は、「アジャイル」と同様、エンジニアチームでよく聞く言葉の一つですが、ビジネスシーンにおいてプロジェクトを進めるときは、エンジニアチームでなくとも大抵何らかの方法で反復作業を行っています。この「反復型プロセス手法」を用いれば、リスクの軽減、効率性アップ、そしてより柔軟かつダイナミックな方法で課題に取り組めるようになります。
この記事は、反復型プロセスを試してみたいという方やその基礎知識を知りたい方におすすめです。反復型プロセスとはどういうものか、メリットとデメリットもご紹介。また、反復型プロセスの導入方法も解説します。
反復型プロセスとは、プロジェクトや製品、取り組みを構築、洗練、改善していくプロセスのことを言います。このプロセスでは、最終的な結果に満足するまで作成、テスト、修正を繰り返し行うため、プロジェクトを最終目標へと近づけるための “試行錯誤の手法” とも呼べるでしょう。
同じことを何度もくり返し行うことが「反復」の意味ですが、ビジネスシーン、特に開発シーンで用いられるときは、”プロセスを何度もくり返すこと” を表す事が多いです。
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アジャイルプロジェクトを効率的に管理する方法非反復型プロセスは、その名のとおり反復を基本的に行わない開発プロセスのことを言います。
非反復型プロセスでも、チームは協力して最終的な製品を作りますが、必ずしもその過程で新しいアイデアが試されるとは限りません。一般的に非反復型プロセスでは、テスト段階で意図した通りになるように、構想・制作の段階に時間をかけます。
ウォーターフォールは、最もよく知られる非反復型プロセスです。このモデルでは、プロジェクトが始まる前にプロジェクトのフェーズを定義します。それぞれのフェーズは、その前のフェーズが完全に完了したところで始まります。要件やリソースは通常プロジェクトの開始前に確定し、プロジェクト計画の変更はできる限り避けます。
たとえば、デザイン会社と協力して電子書籍を作成するとしましょう。まずは、電子書籍で使う原稿をすべて提供する必要があります。次に、デザイン会社がその原稿をもとにデザインを制作します。最後に、社内チームでデザインが完了した電子書籍の原稿を校閲し、問題がないことを確認します。これはすべてのフェーズがその前のフェーズに依存している (デザインが完了した電子書籍を校閲するには、デザインが完了している必要がある) ので、ウォーターフォールモデルの一例として挙げられます。
記事: ウォーターフォール、アジャイル、かんばん、スクラムの違いを徹底解説アジャイル開発も反復型開発も、どちらも「くり返し型」である点で共通しており、その違いは少々見えにくいかもしれません。
簡単に言うと、反復型開発プロセスは計画を重視したモデルで、価値固定型とも言えます。ビジネスにおける課題を理解したうえで価値を明確化し、プロセスはしっかりと管理される傾向にあります。
一方のアジャイル開発は、計画よりも価値を重視したモデルと言えます。計画に常に従うよりも、変化に対応していくのが、このアジャイルプロセスです。
反復型開発プロセスは、リーン方式やアジャイルプロジェクト管理の基本となるプロセスですが、アジャイルチームに限らずどのチームでも応用することができます。反復型プロセスでは、個人やチームが最終的なプロジェクト成果物に満足するまで、デザインや製品、プロジェクトを継続的に改善していきます。
継続的改善は、反復によってもたらされます。そのため、チームやプロジェクトの種類によっては、非反復型プロセスでは目標の達成が難しいこともあります。エンジニアリングでは未知の事象や予想外の出来事がたくさん発生するため、特にエンジニアチームでは非反復型ではなく反復型プロセスが使われる傾向にあります。
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Asana で生産性が向上する理由ほとんどのチームでは、インクリメンタル開発モデルと反復型プロセスは同じ意味で使われています。この 2 つの用語は実際密接に関連していますが、違いもあります。
反復型プロセスでは、フィードバックや新しい情報に基づいてプロジェクトを洗練・改善していきます。反復型プロセスで重要なのは試行錯誤です。何度も変更が繰り返されることにより、時間とともにプロジェクトが改善されていきます。
インクリメンタルモデル (またはインクリメンタル開発) では、最初のバージョンや成果物の上に新たな機能を追加してよりよいものを作っていきます。このプロセスでは、最終的なプロジェクト成果物をできるだけ早く出すために、意図的に必要最低限のバージョンを作成します (Facebook のかつてのモットー、「すばやく行動し、破壊せよ」のように) 。その後で、その最初のバージョンよりも機能の多いインクリメント (増分) を作成することで、最初のバージョンを反復して改良していきます。そしてこれを、必要な機能をすべて備えた成果物が完成するまで続けます。
反復型プロセスを採用しているチームの多くはこのインクリメンタルモデルを使用しており、逆もまた然りです。優れた反復型プロセスはインクリメンタルでもあり、元の成果物を継続的に改善できるようになっています。また優れたインクリメンタルモデルは反復型プロセスを採用することで、顧客のフィードバックに対応し、必要に応じて方向転換できるようデザインされています。
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無料トライアルを始める電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由では、反復型プロセスがもたらす具体的なメリットには、どのようなものがあるのでようか?反復的プロセスを採用した場合の利点をまとめます。
効率性の向上。反復型プロセスは試行錯誤を伴うため、非反復型プロセスよりも早く目的の結果を得ることができます。
コラボレーションの増加。あらかじめ決められた計画や仕様 (これらの作成にも非常に多くの時間がかかります) に従うスタイルではないため、共同作業が活発になります。
適応性の向上。実装とテストの段階で新しい学びがあるため、目標達成に向けてバージョンの調整が可能です。それが、反復型プロセスの開始時には予想していなかったような変更となる場合もあります。
コスト効率の向上。プロジェクトの範囲を変更する必要が出てきても、最小限の時間と労力を投資しただけで済みます。
並行作業が可能。非反復型プロセスとの手法とは異なり、反復型では必ずしも仕事がそれ以前の仕事に依存しません。プロジェクトの複数の要素を並行して作業できるため、全体のタイムラインを短縮できます。
プロジェクトレベルのリスク削減。反復型プロセスではリスクが特定され、繰り返しの間に対処されます。プロジェクトの最初と最後に大きなリスクを解決するのではなく、小さなリスクの解決に継続的に取り組みます。
信頼性の高いフィードバックの獲得。ユーザーが確認や操作をできるようなバージョンがあれば、ユーザーは何が有効で何が有効でないか、段階的なフィードバックを送ることができます。
反復型モデルはどんなチームやプロジェクトにも適しているというわけではありません。ここでは、反復型プロセスのデメリットをご紹介するので、自分のチームに合っているかを確認しましょう。
スコープクリープのリスク増加。反復型プロセスの試行錯誤の性質上、プロジェクトが予想外の方向に発展してしまい、当初のプロジェクトスコープを超えてしまう可能性があります。
計画と要件に柔軟性がない。反復型プロセスの最初のステップは、プロジェクト要件の定義です。反復型プロセス中にこの要件を変えてしまうと、作業の流れが途切れてしまったり、プロジェクトの目的に適さない反復を繰り返してしまう原因となります。
曖昧なタイムライン。満足のいくソリューションを得るまでバージョンを作成、テスト、修正するため、反復型プロセスのタイムラインは明確に定義されていません。また、バージョンが違うとテストにかかる時間も変わるため、反復プロセス全体のタイムラインにも影響を与えてしまいます。
それでは、反復型プロセスの具体的な実施方法を見ていきましょう。ここでは、5 つのステップにわけて考えます。
まず最初のステップでは、プロジェクト計画を立て、プロジェクト全体の目標を決定します。この段階では、プロジェクトの成功に必要不可欠である「ハードな」要件を定義しましょう。このステップを飛ばしてしまうと、反復しても目標を達成できないリスクが生じます。
このステップでは、プロジェクトのビジネス的なニーズと技術要件に焦点を当てます。ステップ 1 が目標を明確にするプロセスだとすると、ステップ 2 は最終的に目標を達成するための設計をブレインストーミングするプロセスです。
3 つ目のステップでは、プロジェクト成果物の最初のバージョンを作成します。このバージョンは、分析と設計によって、最終的なプロジェクト目標を達成するものとなります。どのくらい詳細に、時間をかけて作成するかはプロジェクトによって変化します。
最初のバージョンが完成したら、最も合理的と思われる方法でテストを行います。ウェブページの改良に取り組んでいる場合は、現在のウェブページと比較した A/B テストを行うとよいでしょう。新製品や新機能の開発であれば、潜在的な顧客を対象としたユーザビリティテストの実施を検討しましょう。
それに加えて、プロジェクト関係者にも確認を取りましょう。新しいバージョンについて意見を求め、フィードバックをもらいましょう。
記事: Plan (計画) - Do (実行) - Check (評価) - Act (改善) (PDCA) サイクルとは?テストが終わったら、そのバージョンの成功度を評価し、変更が必要な点について議論します。このバージョンは、プロジェクト目標を達成しているか?達成できた、または達成できなかった理由は?何かを変更すべき場合は、ステップ 2 に戻って次のバージョンを作成し、反復型プロセスを再開します。最初の計画と目標設定のステップは、すべてのバージョンで共通である点に注意してください。納得のいく成果物ができるまで、バージョンを積み重ねます。
反復型プロセスを再開する場合は、全員がプロジェクト目標をしっかり覚えていることを確認してください。反復型プロセスは繰り返す回数によって、数週間から数か月かかります。反復型プロセスを再開するたびにプロジェクト目標を軸とし、目標となる北極星を見失わないようにしましょう。
効果的な目標を設定する方法ここでは、反復的プロセスの例を部門別にわけて、いくつかご紹介します。
エンジニアチームの多くは、新機能の開発、バグ修正、新戦略の A/B テストなどで反復型プロセスを使用しています。
多くの場合、同じくらいよさそうなバージョンをいくつか作成してユーザーにテストしてもらい、問題点や成功点の指摘を受け、最もよい成果の出たものを引き続き開発していきます。
意外かもしれませんが、製品開発は大抵反復的なプロセスで行われています。これまでに個人的に購入したデバイスを思い出してみてください。きっと、そのデバイスには前のバージョンがあって、おそらく後のバージョンもあるでしょう。
たとえば、携帯電話の進化やスピーカーの小型・ポータブル化、冷蔵庫でさえも家族のニーズに合わせて変化してきていることを考えてみてください。これらはすべて、反復型プロセスから生み出された商品です。
マーケティングチームの中には、反復型プロセスを活用しているチームもあれば、それほどでもないチームもあります。しかしほとんどのマーケティングは、ある程度反復的に行われています。
たとえば、特定のキャンペーンやイベントのために、2 種類の広告文を試してどちらの方が高いエンゲージメント率を得られるかテストしたり、2 種類のメールマガジンを送ってクリック率を比較したりするなどです。また、ブランドマーケティングチームは反復型のデザインプロセスを用いることで、ターゲット層に適したイメージを特定することもできます。
セールスチームの顧客対応業務のほとんどは反復的ではありませんが、反復型プロセスが有効なタスクもあります。
たとえば、営業メールでは反復的なアプローチをとることができます。担当者が数種類の件名をつけてメールを送信し、その結果を分析、最も成果の出た件名を今後も採用していくという形です。
反復的に行われるプロセスについて解説しました。反復型プロセスのメリットとデメリットを把握し、自分のチームに適しているかどうか判断してから用いるようにしましょう。最終的には、どんなチームでも反復型プロセスから何かを学ぶことはできます。可能な限り、試行錯誤の精神で仕事に取り組みましょう。
迷ったときは、柔軟性とコラボレーションを重視してください。そして、反復型プロセスの手法を導入するかどうかにかかわらず、仕事を継続的に改善することを目指しましょう。
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