従業員ハンドブック: チームに情報を提供し、意欲を引き出す方法 (実例付き)

多くの人は、従業員バンドブックをお決まりの法的情報を記載した定型的なものと考えるでしょう。確かに、会社は、新規採用者にさまざまな方針や規制を伝えることに従業員ハンドブックを使いますが、社内文化を説明するための文書としても進化しています。最近の会社は、会社の情報や運営方法を示したり、組織の一体感を生み出したりするためにも従業員バンドブックを使用します。

従業員ハンドブックについて新たな見方をすれば、新規採用者やベテラン社員を問わず、すべてのチームメイトに情報を提供し、やる気を引き出すことができます。この記事では、優れた従業員ハンドブックを作成する方法について説明します。このハンドブックを使用すると、価値観を共有できるだけでなく、会社の方針を通じて、そうした価値観がどのように形となって表れるかを示すこともできます。

従業員ハンドブックとは？

従業員ハンドブックは、会社の運営目的、目標、プロセス、方針について新しいチームメンバーを教育するためのものです。チームメンバーが会社の重要な情報を確認するための参考資料となるほか、法的にも、文化的にも期待される行動基準を定めるためのものでもあります。

従業員ハンドブックを初めて作成する場合も、既存のものを更新する場合も、会社の情報が細かく記載されたハンドブックを用意することにはたくさんのメリットがあります。

従業員ハンドブックは以下の点で便利です。

• チームメンバーが該当する法的文書や基準を確認できる

• チーム内のコミュニケーションを合理化できる

• 新しいチームメンバーのオンボーディングをスムーズに進められる

• 会社のオペレーションについて透明性を提供する

従業員ハンドブックに記載すべき内容

通常は、新しいチームメンバーが従業員ハンドブックの主なオーディエンスとなりますが、既存のチームメンバーのことも考慮しましょう。このハンドブックは、研修用のマニュアル、ウェルカムキット、参考資料をまとめたものとして考えるとよいでしょう。従業員ハンドブックに決まったフォーマットはありませんが、多くの会社では以下のセクションを組み合わせたものが使用されています。

このガイドは、従業員ハンドブックで一般的に使用されるセクションをまとめたもので、必須要素を完全にリストアップしたものではありません。従業員ハンドブックを公開する前に、現地の法令および連邦法に基づいて、関連するすべての情報が含まれていることを法務チームに確認してください。

導入:

• 会社概要と価値観: 会社のミッションステートメントを掲げ、価値観を説明し、運営目的を述べます。

• 会社の歴史と将来: 会社設立の大まかな経緯と将来のビジョンを記載します。

入社に際して:

• 勤務初日ガイド : チームメンバーの勤務初日の内容は職務によってわずかに異なりますが、職場環境と社内文化を重視した従業員ハンドブックは、どの新規採用者にとっても勤務初日を乗り切るためのガイドとして役立ちます。

• 最初の 1 か月の予定: 新規採用者の最初の 1 か月の予定を説明することにより、勤務初日ガイドの内容をより詳しく伝えます。

チームメンバーの関係:

• チームの管理と構造: 従業員ハンドブックは、チームメンバーが組織図をきちんと理解できるよう、チーム構造について説明するのにとても便利です。

• 行動規範: 行動規範とは、行動の基準を定め、チームメンバーの説明責任を明確にするものです。このセクションには、勤務中の携帯電話や SNS の使用、ドレスコード、お互いに尊重し合うこと、出勤する時間や会議に出席する時間を守ることなどの規則を含めることができます。行動規範は、社内の法務チームが作成、レビューするものです。

• リモートワークとハイブリッドワークの方針: 多くの会社では、リモートワークやハイブリッドワークが新しい常識として採用されています。チームが完全にリモートに移行したのなら、ハンドブック全体をリモートワーク環境を考慮にした内容にするとよいでしょう。たとえば、テクノロジーの要件、ビデオ通話をする際のマナー、リモートワークツールを使ったコミュニケーションなどが方針の焦点になると考えられます。

会社の運営:

• 報酬とキャリアアップ: このセクションでは、会社がチームメンバーに給与を支払う頻度を明確にし、チームメンバーが給与を受けるのに必要なステップがあれば、それについて説明します。キャリアアップについては、チームメンバーの将来的な成長路線をまとめ、パフォーマンスレビューのプロセスについて説明します。報酬とキャリアアップに関する情報の作成とレビューは、必ず社内の法務チームに行ってもらいましょう。

• 勤務時間、有給休暇 (PTO)、休暇に関する方針: このセクションでは、チームメンバーが休暇を取る方法と病欠に関する方針を説明します。パートタイムの勤務スケジュールで働くチームメンバーとフルタイムのチームメンバーとでは休暇を取るための条件が違うという場合は、その違いを明確にしておきましょう。そうした条件に影響し得る現地の法令および連邦法については、社内の法務チームのガイドラインを参照してください。

• 福利厚生と待遇: 福利厚生には、健康保険や歯科・眼科医療保険、休暇、401(k) プラン、チャリティーへの寄付の払い戻し、フィットネスジムのメンバーシップの割引などが含まれます。会社がチームメンバーに提供する福利厚生や待遇については、目立つように記載しておきましょう。

一般的な注意事項:

• 従業員の退職と解雇: 新規採用者を温かく歓迎する書類に暗い内容を記載するのは避けたいものですが、このセクションでは従業員を解雇することが必要になり得る場合について説明します。またこれは、チームメンバーはいつでも退職できることを再度確認するものでもあります。このセクションの作成とレビューは、社内の法務チームに任せましょう。

• その他の免責事項 (または法的要件): 従業員ハンドブックには、他の免責事項や法的要件を含めることができます。社内の法務チームと協力し合って、開示する必要のある法的情報はすべて確実に記載するようにしましょう。しかし、そうした法的書類は、新規採用者用の書類など、他の書類に含めてよい場合もあるため、従業員ハンドブックが法的な文書になりすぎていると感じる場合は、法務チームに相談して、別の開示手段を検討しましょう。

従業員ハンドブックの法的要件

一部の州では、会社はチームメンバーに連邦、州、対象地域、または組合による規制に関する情報を提供することを義務付けられる場合があります。従業員ハンドブックを作成する際は、その情報を人事チームや法務チームと一緒に確認して、該当する規制に準拠します。

従業員ハンドブックを、どちらかと言えば、社内文化や基本的なプロセスのガイドとして使用したいのであれば、新規採用者向けの法的情報は、新規採用者の契約書など、別の書類に含めることができます。

従業員ハンドブックの作成に役立つヒント

従業員ハンドブックは、単に会社の方針や法的条項をリストアップするためのものではありません。個性を付け加えれば、新しいチームメンバーは、歓迎されていると実感し、安心することができます。

従業員ハンドブックは、デジタルなフォーマットで書けば、インタラクティブでアクセス可能なものにすることもできます。以下に紹介するヒントを使って、新しいチームメンバーが新しい仕事にワクワクするような有益なリソースを作成しましょう。

1. ブランドボイスを使う

お客様とのやり取りに使う、会社の「ブランドボイス」が確立している会社は多いでしょう。そのボイスは、フォーマルな感じでも、陽気な感じかも構いません。いずれにせよ、人々にブランドについて知ってもらい、信頼してもらうには、すべてのコミュニケーションに必ずこのボイスを使うことが必要となります。

社内のチームは会社のブランドボイスがどのようなものであるかを知っていますが、従業員ハンドブックは、新しいチームメンバーを歓迎し、どのような会社であるかを示す手段です。この文書全体に渡ってブランドボイスを使用すれば、ユーモアを受け入れる会社なのか、より真面目な雰囲気の会社なのか、すべてのコンテンツで同じテーマを持つ会社なのかといったことを示すことができます。

2. 会社の価値観を上手に表現する

色々な意味で、チームメンバーが初めて会社の価値観に触れるのは従業員ハンドブックを読むときでしょう。したがって、ただ内容を羅列するのではなく、このチャンスを使って文章として上手に表現してみましょう。たとえば、こんな手法があります。

• 実例を取り入れる

• 読み手をストーリーの中に引き込む

• インパクトの強い動詞や個性の活用

会社の価値感の 1 つが「チームメンバーを尊重する」である場合、従業員ハンドブックにそのまま記載しても、新規採用者はその会社は他の会社と一味違うなどとは考えないでしょう。尊重することが会社の価値観の 1 つであるなら、次のような文章を書くのがおすすです。

「Apollo Enterprises では、ソウルの女王アレサ・フランクリンよりも力強く「R-E-S-P-E-C-T」する姿勢を表現しています。当社の IT チームは、1 週間のうちの 1 日をチームメンバーに感謝する日にしているほどです。毎週水曜日になると、IT チームは、各メンバーがグループにもたらしている価値をお互いに伝え合いながら部屋を歩いて回ります。」

3. 更新可能な文書にする

従業員ハンドブックを簡単にアクセスできるようにするには、デジタルフォーマットで書くことが欠かせません。デジタルのハンドブックには、他にも以下のようなメリットがあります。

• 価値観や方針が変わるときは、必要に応じて更新できる

• インフォグラフィックスや動画を使ってインタラクティブにできる

• 関連する他のリソースにリンクできる

• 必要に応じて社内のチームや他のオーディエンスにもアクセスを提供できる

従業員ハンドブックは、直接内容を変更でき、また印刷してチームと共有しなおす必要がないものであれば、更新も楽に行えます。ハンドブックは、以下のような場合に更新が必要になることがあります。

• 法律が変更される

• 古い方針を現代に合わせる

• 新しい役職を作る

• 新しいテクノロジーを追加する

• 意識を高める

• 古い方針を明確にする

• 職場でのコミュニケーションを合理化する

• ハイブリットワークやリモートワークの方針を追加する

• 職場文化を改善する

4. 追加のリソースを提供する

チームメンバーが必要とすると思われる情報を余すところなく 1 つの文書にまとめるのはとてつもない作業になるでしょう。新規採用者に関係のある情報で、従業員ハンドブックには直接記載したくないというものがあれば、文書内にその情報へのリンクを挿入できます。そうすれば、チームメンバーはその情報のある場所がわかり、またメインであるハンドブックが情報で溢れかえることも避けられます。

リンクとして含めるべき項目のよい例としては、法的条項や方針が挙げられます。そうすることで法的な事柄もカバーしながら、従業員ハンドブックを重すぎず、楽しく読める文書に仕上げることができます。ここでもまた、社内の法務チームと協力し合って、関連する文書が含まれていることを確認しましょう。

従業員ハンドブックの例 (アイデア用)

以下に、3 つの会社のユニークでデジタルな従業員ハンドブックの例を紹介します。それぞれに、会社の文化と価値観がはっきりと表現されています。ハンドブック制作の参考にご活用ください。

1. MobileJazz

MobileJazz は、ニューヨーク州のブルックリンを拠点に活動するソフトウェア会社です。同社の従業員ハンドブック (ダウンロードはこちら) には、それが「ハンドブック、ブループリント、ガイダンスマニュアル、ミッションステートメントをひとまとめにしたもの」であることが一番最初に説明されています。チームメンバーが仕事を始めたり、プロジェクトを進行させたり、会社の運営について理解したりするのに必要なすべての情報が 45 ページのデジタルコンテンツに収められています。

2. PeopleHR

PeopleHR は、主に人事アプリケーションを開発するソフトウェア会社です。同社の従業員ハンドブックは、見るからに楽しそうな文書になっています。ノートブックのようなスタイルで書かれたこのハンドブックには、勤務初日、1 か月後、実務へと進んでいく新しいチームメンバーへのアドバイスがぎっしりと詰め込まれています。このハンドブックは比較的簡潔に書かれていますが、遊び心のある形でオンボーディングの基本をカバーしています。

3. Valve

Valve は、ビデオゲームの制作会社です。同社は、従業員ハンドブックを物語のようにデザインし、目次、前書き、用語集、イラストを盛り込んで仕上げています。チームメンバーは、各章を通じて、最初の 6 か月の予定、Valve の運営スタイル、社内で昇進していく方法など、会社と共に歩む道のりについて詳しく学んでいきます。

効果的なハンドブックで新しいメンバーをサポート

結局は誰も読まないにのに会社が義務として新規採用者に渡していた、そんな従業員ハンドブックはもう過去のものです。会社の概要や運営方法を表す、いつでも更新可能な文書を作成すれば、新規採用者は、それを読んで、その会社に勤めることを誇りに思ってくれるでしょう。

ワークマネジメントソフトウェアを使って、従業員ハンドブックと強力な人事ワークフローを組み合わせましょう。Asana を使用すると、複数のチームをまたいで仕事の調整を行い、繰り返しのプロセスの無駄をなくし、情報を一元管理できるため、新しいメンバーも、ベテランのメンバーも、自信を持ってそれぞれの役職で成長していくことができます。