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プロジェクト管理に携わったり、仕事を見える化する方法を模索したことがある人は、かんばんという言葉を聞いたことがあるかもしれません。かんばん方式は視覚的プロジェクト管理の一つの形態です。製品、エンジニアリング、ソフトウェア開発チームに特に人気がありますが、どのチームでも使用できます。この記事では、かんばんの定義、仕組み、そしてこのツールを使ってチームの仕事を管理するための最善の方法について知っておく必要があることをすべて取り上げます。
更新: この記事は、かんばんの意味と歴史に関するさらに詳しい記述を含めて 2022年 11月に改訂されました。
チームが新しいプロジェクトを開始していると想像してください。誰が何に取り組んでいるのか、どの段階にあるのか、いつ予定されているのかを常に把握できるように、仕事を簡単に可視化する方法が必要です。プロジェクト関連のドキュメントやスプレッドシート、メール、メッセージをスクロールして、その洞察をまとめることも可能ですが、もっと効率的な方法が存在します。それが、かんばん (かんばんボード、かんばん方式、カンバンボード) です。
この記事では、かんばんボードとは何か、その仕組みとメリット、デメリットについて解説します。プロジェクトが円滑に進むために必要な情報はすべて一か所にまとめて、効率性と生産性をアップしましょう。
かんばん方式とは生産管理方法のひとつで、チームがやるべき仕事と各メンバーのキャパシティのバランスをとるために効果的です。かんばんというフレームワークは継続的な改善の哲学の上に構築されており、仕事の項目をプロダクトバックログから引き出して (「プル」して)、安定した仕事のフローを供給します。
かんばんフレームワークは、ボードを通じて適用されます。これは、チームがワークロードやワークフローをよりよく可視化できる視覚的なプロジェクトマネジメントの一形態です。
かんばんボードテンプレートを作成この方式は、1940 年代後半にトヨタ自動車の技術者である大野耐一氏によって開発されました。大野氏は、リーン生産の要素を取り入れることでトヨタ生産方式を改善できることに気付いたのです。大野氏のかんばんフレームワークは、予測された需要に対して生産を試みるのではなく、消費側の需要の結果として製品を生産し、再供給するものでした。かんばんの原則やフレームワークは、トヨタの製造プロセスを「プッシュ (push)」プロセス (製品が市場に押し出される) から「プル (pull)」プロセス (市場の需要に基づいて製品が生産される) に移行させました。これは、トヨタが市場で競争力のある存在であり続けながら、在庫レベルを下げられることを意味しました。これが有名な、トヨタの「ジャストインタイム生産」です。
大野氏が構築したリーン生産フレームワークは、「かんばんカード」に頼っていました。トヨタでは、かんばんカードとは新製品や部品、在庫が必要なことを示す紙のカードのことで、その品目の生産プロセスのトリガーとなりました。
必要なものを、必要なときに、必要な量だけ後工程が前工程から引取る方式 “ジャストインタイム生産”。トヨタが開発した「かんばん」は、これを効果的に進めるための運用手段でした。
かんばんの仕組みは今でも多くの製造現場で使われていますが、2000 年代初頭にはソフトウェア開発にも応用されました。大野氏のリーン製造方式に触発されて、ソフトウェア開発のためのかんばん (kanban) は、大野氏のリーン製造方式と同じ「プルシステム」のプロセスを実装しています。
現代では、チームは仕事のバックログからスタートします。チームメンバーの余力とキャパシティに基づいて、仕事はバックログから「プル」されます。そして、チームメンバーは、かんばんボード上のステージで表現されるタスクのライフサイクルの動きを見て、仕事の完了までを視覚的に追跡できます。現在のかんばんは、需要とキャパシティのバランスをとるための視覚的なプロジェクト管理システムとして機能しています。
かんばんというビジネス用語と一緒に「スクラム」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。実際、スクラムを実行しているほとんどのチームはかんばんボードも使用しています。かんばんと互換性があるとはいえ、スクラムは別のフレームワークです。では、両者の違いとは何でしょうか?
かんばんはプロセスの改善に焦点を当てています。仕事をリアルタイムに視覚化するためにプロセスを改善する方法、それがかんばん方式です。
スクラムはチームがより多くの仕事をより早く終わらせるための手法です。そのためにスクラムでは、「スプリント」という 2 週間のワーキングセッションを繰り返し、毎日ミーティングを行い、サイクルタイム中に完了する仕事量を設定します。
かんばんとスクラム、この 2 つのいいとこ取りをした手法「スクラムばん」については『スクラムばん: 2 つのアジャイル手法をいいとこ取り』をご覧ください。
ソフトウェア開発のためのかんばんは、アジャイルのサブセットであると言えます。アジャイルは、チームが変化に柔軟に対応できるように設計されたプロジェクト管理モデルです。アジャイルは、適応的な計画、進化的な発展、早期納品、そして継続的な改善を目指します。
かんばんボードでは、仕事は列によって整理されたプロジェクトボードに表示されます。慣習的に、各列は仕事のステージを表しています。最も基本的な形には、To-Do、進行中、完了などの列を設け、個々のタスクはボード上で視覚的なカードで表現され、タスクが完了するまで列間を移動します。
ホワイトボードや紙でもかんばんボードを作成できますが、最高の結果を得るには専用のオンラインツールを使ってみましょう。オンラインのかんばんボードツールでは、コンテンツを動的に視覚化し、プロジェクトの仕事の全容がひと目でわかるインサイトが得られます。Asana のボードビューなどのバーチャルかんばんボードを使い、仕事が各ステージを動く様子を視覚化してください。
Asana を無料で試す現在のかんばんボードは通常、仕事のステージを表す列から成るバーチャルボードです。ただし、今でもかんばんボードをホワイトボードと付箋紙で追跡することもできますし、根本的な仕組みは変わっていません。かんばんボード内の各「カード」はタスクを表しており、タスクカードは仕事が完了するにつれて仕事のステージを移動していきます。このシステムを使用しているチームは、1 枚のかんばんボード上で共同作業をする傾向がありますが、通常、個々のタスクは個々のチームメンバーに割り当てられます。
このフレームワークの展開を考える際に、チームの指針となるかんばんの原則が 4 つあります。
1. 今やっていることから始める
2. 漸進的、進化的な変化の追求に合意する
3. 現在のプロセス、役割、責任を尊重する
4. リーダーシップの発揮を奨励する
かんばん方式は、現在のあらゆるワークフローやプロセスに適用できます。スクラムのような詳細に定義されたアジャイル管理プロセスとは異なり、かんばんはチームのコアプラクティスの範囲内で柔軟に機能します。
大きな変更はチームを混乱させる可能性があり、一度にすべてを変更しようとすると、新しいシステムが機能しない可能性があります。かんばん方式が継続的な改善と段階的な変化を指標としているのは、このことを理解しているからです。一度にすべてを変えるのではなく、段階的な変化を追求することで、チームのプロセスを時間をかけて着実に進化させていきましょう。
他のリーン方式とは異なり、かんばんの仕組みにはチームの役割が組み込まれておらず、現在のチーム構造やプロセスの中でそのまま機能します。現在のプロセスにはきっと素晴らしい要素があるでしょう。一日で仕事のシステムを完全に刷新しようとするとそれが失われてしまいます。
継続的な改善の精神に基づき、かんばん方式では、変化はどこからでも起こりうるものであり、必ずしも「トップダウン」だけではありません。かんばんでは、チームメンバーはプロセスを進化させるための新しい方法をブレインストーミングし、新しい仕事のイニシアチブを率先して取ることを奨励されています。
かんばんワークフローにアプローチする際、チームのメンタリティを導くためのかんばんの原則があります。かんばんプロセスを導入するためには、以下の 6 つのプラクティスに従うことで、チームは継続的に改善し、漸進的な成長を達成できます。
1. 仕事を視覚化する
2. 進行中の仕事を制限する
3. フローを管理する
4. プロセスのポリシーを明確にする
5. フィードバックループを実行する
6. コラボレーションを使って改善し、実験的に進化する
かんばんの最大の利点の一つは、仕事がステージを経て「移動」する過程を物理的に見ることができることです。タスクカードは、かんばんボードの左側から始まり、チームが仕事を進めていくうちに、それが「完了」の列までゆっくりと移行していきます。このプラクティスで、仕事がどのようにステージを経て移動していくのかを大まかに把握できるだけでなく、仕事のステージがリアルタイムに一目で確認できます。
アジャイルな方法として、かんばん方式は早期納品の原則に基づいて構築されています。つまり、タスクは「WIP (work in progress)」という曖昧なステータスで停滞するのではなく、列間をすばやく移動します。一度に何個のタスクが「進行中」であるべきかという要件設定はありませんが、一般的には、並行作業を減らし、個々の仕事の生産に集中することをチームに奨励してください。
プラクティス #2「進行中の仕事を制限する」を実現するための最良の方法は、かんばんボード内のタスクのフローを最適化することです。フローを管理し、改善することで、リードタイム (1 つのタスクを開始してからかんばんボードの「完了」の列に移動するまでの時間) を短縮し、重要性が高いうちにタスクの完了や新製品の納品が可能になります。
かんばんではタスクの移動が非常に速いので、運用を開始する前に、チームがルールを確立し、そのルールが明確に周知されていることを確認してください。プロセスのポリシーは、チームがかんばん方式をどのように実行するかの指針となります。さらに、チームの全員が、4 つ目のかんばんの基本原則「すべてのレベルでのリーダーシップの発揮を奨励する」に従ってかんばんポリシーに参加し、革新することを奨励する必要があります。
かんばんでは、顧客とチームという 2 つの異なるグループからフィードバックを収集します。
顧客から、チームが作成したソリューションの品質と効果についてのフィードバックを収集します。制作したものは正しかったか?何か問題はあったか?コードのバグや製品の欠陥などの問題があった場合は、かんばんフローを見直し、レビュー、審査、評価のための時間を増やしましょう。
かんばんの原則を適用するプロセスそのものについて、チームと頻繁に確認しましょう。チームは自分たちのアウトプットについてどのように感じているでしょうか?この段階でも、すべてのレベルでリーダーシップを発揮することを奨励し、チームのプロセスについてのポリシーを改善する機会があります。
かんばんの核心には継続的な改善という原則があります。これは、他のシステムもかんばんと連携してうまく機能する可能性があるということです。それがスクラムであっても、何か他のものであっても、常に共同作業を行い、新しいことを試して、必要に応じてプロセスを進化させましょう。
原則の 1 つ目 (今やっていることから始める) に則り、かんばんはどんなワークフローにも適用できます。かんばんボードを可視化するには、Asana のようなワークマネジメントプラットフォームの使用が一番です。Asana では、すべてのプロジェクトをかんばん方式のボードビューを含む 4 つの方法で見ることができます。
電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由Asana でかんばんボードを作るかんばんボードの作成方法に関わらず、かんばんを既存のプロセスに適用するための簡単なステップを以下にご紹介します。
かんばんボードには、最終的にはすべてのバックログタスクと完了した仕事が格納されますが、取り急ぎ真っ白なボードから始めても構いません。Asana のようなワークマネジメントツールを使用している場合は、「ボード」ビューになっていることを確認してください。
慣習的に、かんばんボードの列は、仕事のさまざまなステージを表しています。作成する列はチームによって異なりますが、以下のような列が一般的です。
バックログ、受信トレイ、または新規: この列には新規の仕事が入ります。それからチームメンバーに割り当てられていきます。
準備完了または優先: キックオフの準備ができたら、この列に仕事を移動します。
進行中: これは現在進行中の仕事です。チームによっては、進行中の列を他のさまざまな列に分けることができます。たとえば、コンテンツチームはドラフト、レビュー中、および編集中の列を作成し、エンジニアリングチームは開発中、テスト中、およびデプロイの列を作成できます。
保留中: 何らかの理由でブロックされている場合に、仕事をこの列に移動します。
完了: タスクは完了するとこの列に移動します。
かんばんボードでは、各タスクはカードで表されます。タスクのタイトルは行動可能なものにしましょう。チームが何に取り組むべきかを正確に把握できるように、名前を動詞で終わらせることをおすすめします。
バーチャルワークマネジメントソリューションを使用している場合は、かんばんタスクカードに追加情報、コンテキスト、ファイルを追加することもできます。そして、タグを使って、タスクの所要時間や優先度などのメタデータを追跡できます。
かんばんボードを使ったワークフロー管理の中核となる要素は、仕事をステージごとに進めることです。タスクをドラッグ & ドロップすることで手動で行うこともできますが、この仕事を自動化してくれる仮想的なワークマネジメントソリューションを探すこともできます。たとえば、Asana では、タスクがチームメンバーに割り当てられたときに進行中の列に移動させるなど、関連するタスク情報に基づいて仕事を自動的に別の列に移動させるルールを設定できます。
Asana で仕事を自動化理論的には、同じバーチャルかんばんボードを無期限に使用できます。かんばんボードは連続的なプロセスを通して仕事を追跡するので、現在のボードを捨てる必要はありません。しかし、スクラムのようなシステムでは、新しいスプリントのたびにかんばんボードを頻繁に作成することになります。新しいボードを作成するか、ホワイトボードを消去して、タスクのバックログを引き継いで、もう一度仕事を始めましょう。
かんばんの定義や仕組みがわかったところで、あとは「自分のチームでかんばんを使うべきか」という疑問だけが残ります。正解も不正解もありませんが、ここではかんばんフレームワークを使うことでチームが得られるメリットとデメリットをご紹介します。
かんばんは、チームが仕事とチームのキャパシティのバランスをとるために役立つ、優れた柔軟性のあるツールです。正しい方法で行えば、かんばんで以下のことができます。
チームの仕事を一目で把握できます。視覚的なプロジェクト管理の一形態として、かんばんはタスクに命を吹き込み、チームのワークフローの明確な把握に役立ちます。
特にリモートチームの場合は、明確さを高めることができます。チームがリモートで仕事をしている場合、全員が何に取り組んでいるのかを把握するのは難しい場合があります。かんばんボードは、仕事を一元管理して、進行中の仕事量を常に減らすことで、チームは誰が何に取り組んでいるのかを一目で把握できます。
柔軟性を高めることができます。かんばんフレームワークは継続的な改善プロセスの上に構築されているため、かんばんを導入したチームは、時間の経過とともに、より柔軟でダイナミックなものになります。4 つの基本原則と 6 つの重要なプラクティスに従えば、チームはより機敏になり、変化に対応できるようになります。
かんばんはすべてのチームにとって正しいフレームワークではありません。かんばん方式のデメリットとしては、以下のようなものがあります。
かんばんはあらゆるチームに有効なツールですが、スクラムやアジャイルなどのリーン方式と同様に、かんばん方式は非エンジニアチームの間ではあまり一般的ではありません。非エンジニアチームにかんばんプロセスを導入しようと考えているのであれば、ワークストリームをかんばんに一度に 1 つずつ移行して、チームの導入プロセスを支援しましょう。
進行中の仕事が多すぎると、すぐに手に負えなくなってしまうことがあります。各タスクカードは非常に多くの視覚的なスペースを取るため、かんばんボードはすぐに乱雑になり、一度に多くのものが進行中の場合は、その数に圧倒されてしまいます。
かんばん方式 (カンバンボード) について、その仕組みとメリット、デメリット、ベストプラクティスをご紹介しました。かんばんボードを使えば、チームは全員が取り組んでいるタスクと、そのタスクがプロセスのどこにあるのかを明確に把握できます。チームのためにかんばんボードを試す準備ができたら、Asana を試してみましょう。すべての Asana プロジェクトは、ボードビューを含む 4 つの方法で表示できます。ボードビューはかんばんスタイルのボードで、チームが仕事をより簡単に視覚化してナビゲートするために役立ちます。
プロジェクトが円滑に進むように、ワークフローを視覚化しましょう。Asana のかんばんボードテンプレートは自由にカスタマイズが可能だから、個々のニーズにも応えます。
かんばんボードテンプレートを作成