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EVM は、従来のコスト管理とは異なり、スケジュールとコストを一元管理する手法です。EVM とは何か、そのメリットや指標を知り、今後のマネジメントに活用してみてください。
更新: この記事は、EVM グラフの作成方法に関する記述を含めて 2024年 3月に改訂されました。
プロジェクトを運営する上で、コスト管理に困ったことはありませんか?「プロジェクトは成功したが、最後までコスト超過に気付かなかった」という体験をしたことがあるかもしれません。もしそうなら、この記事で紹介する EVM というプロジェクト管理手法を今後の参考にしてみましょう。
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EVM とは、Earned Value Management (アーンドバリューマネジメント) の頭文字をとったビジネス用語で、プロジェクトの進捗を定量的な金銭価値で管理、分析する手法です。
プロジェクトを管理する場合、納期を意識するあまり時間で管理することが多いかもしれません。しかし、コスト面にも焦点を当てないと実際の利益は把握できないでしょう。コストとスケジュール進捗を同時に管理できる手法が、この EVM なのです。EVM は定量的な単位を使用するので、「この作業は思ったよりうまく進んでいません」などの主観的で不明瞭な進捗報告を改善することができます。
EVM は 1960年代のアメリカで使用されたことが始まりとされ、日本では 2003年に経済産業省が『EVM 活用型プロジェクト・マネジメント導入ガイドライン』を公表しました。スケジュールとコストを効率的に管理できる手法として、現在多くの企業で導入されています。
では EVM は従来のコスト管理とどのような点で異なるのでしょうか?通常のコスト管理では、予算と実際のコストを用いてマネジメントするのに対し、EVM では「出来高」を考慮に入れている点がその大きな違いです。たとえ予算内で収まっているように見えるプロジェクトでも、スケジュールの進捗に遅れが出ていたら将来的に予算を超過する可能性は十分にあるでしょう。コストのみを見ていただけでは気付けない状況を可視化できるのが、EVM の特徴です。
記事: コスト管理は初めてですか?ここから始めましょう。数あるプロジェクト管理手法の中から EVM (アーンドバリューマネジメント) を使うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。EVM がプロジェクト管理に有効な理由は、大きく分けて次の 2 点です。
EVM は現在進行しているプロジェクトの進捗状況を可視化することに優れています。これは納期や期限などの時間的なスケジュール管理に限った話ではなく、同時に費用の管理も行えるため、効率的です。また定量的な数値を用いることで、計画とのズレを明確に知ることができ、調整や修正の判断もしやすいでしょう。
プロジェクトスケジュールを効率的に管理する方法EVM では複数の指標を使い、数値を算出します。納期には間に合ったものの予算はオーバーしてしまったのでは、本当の意味でのプロジェクト成功とは言えないでしょう。EVM はプロジェクトの現状を把握し、そこから将来的な数値も予想することができます。そうすることで、問題の早期発見が期待でき、調整や見直しなどの対応も素早く行うことが可能となります。
それでは実際に EVM はどのような要素で構成されているのか見ていきましょう。EVM は以下の 4 つの指標を使って行います。
PV は Planned value の略で「計画予算」(出来高計画値) のことを指します。プロジェクトを計画する段階で設定しなければならない要素で、特定の時点までに完了するタスクや作業に対する予算を表します。この PV によって、コストオーバーなどを判断、把握できるので、EVM のベースラインとも言える指標です。
EV の意味は「出来高 (アーンドバリュー)」(出来高実績値) です。特定の時点までの出来高 (成果の実績、作業量) を表します。手法の名称からもわかるように、EV はこの手法にとって重要な指標であり、プロジェクトの実際の進捗度を確認するときに用いられます。
AC (Actual cost) とは、実際に発生したコストのことのことで、「実コスト」(コスト実績値) と訳されます。ある時点までに実際にかかったコストの合計値のことです。AC が PV と同じであれば、予定通りにプロジェクトが進んでいると判断できるでしょう。
BAC (Budget at completion) は「完成時総予算」のことで、PV と同様、プロジェクトを計画する段階で設定する指標です。EVM において、実際にかかったコストの合計が BAC に収まっている場合は予算内とみなし、超えていれば予算オーバーと判断します。
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Asana でプロジェクトを計画するEVM は横軸に時間を、縦軸にコストを入れた折れ線グラフで表されます。表示するのは前項でまとめた EV、PV、AC の 3 つの指標です。
EV のグラフ: 出来高の推移を示す
PV のグラフ: 予算の推移を示す
AC のグラフ: 実際の費用の推移を示す
3 つのグラフをひとつの表にまとめることで、プロジェクトの予測と実際の進捗の違いを視覚的に明確にします。プロジェクトが予算内に進んでいれば、3 つの指標は同じラインになります。もし進捗が予想よりも早い場合は、実績測定値 (AC) が予算を上回ります。逆に進捗が遅れている場合は、AC のグラフが PV のグラフを下回ることになるわけです。
こうやって視覚的にグラフという形で示すことで、プロジェクト全体の進行状況をリアルタイムに把握し、リスクが発生した場合にも適切に対応することができます。
それぞれの指標を用いて、さまざまな値も算出することができます。その中でも特に重要な数値を具体的に見てみましょう。
CV (Cost variance) は、EV と AC の差異から算出できる「コスト差異」です。
CV = EV - AC
成果を定量化した数値である EV から実際のコスト AC を引いた値がプラスであれば、予算内、マイナスであれば予算オーバーと判断します。また、大きくプラスとなっている場合はコストパフォーマンスがよいと評価することも可能です。
SV (Schedule variance) は「スケジュール差異」のことで、EV から PV を引いて算出します。
SV = EV - PV
スケジュールの進み具合を評価できる SV により、プラスの場合は作業が予定よりも早く進んでいること、マイナスの場合は遅延していることがわかります。差異が大きい場合はスケジュールの見直しを検討する必要があるかもしれません。SV は定期的に算出することが重要です。
CPI (Cost performance index) は「コスト効率指数」のことを指し、EV を AC で割って算出します。
CPI = EV / AC
現時点での出来高を実コストで割ることで、プロジェクトの進捗とコストの関係を可視化することができます。CPI が 1 であれば予定通りですが、もし上回っている場合は予想よりもコストが発生していないことがわかり、1 未満であれば当初計画したよりもコストがかかっていることがわかります。大きくズレがある場合は、コストの見直しを検討する必要があるかもしれません。
SPI (Schedule performance index) は「スケジュール効率指数」や「スケジュール生産性指標」と訳される数値で、EV を PV で割って算出します。
SPI = EV / PV
スケジュール効率の良し悪し、つまり計画通りに進んでいるのか否かを数値で判断できる SPI は、EVM の中でも重要な値のひとつです。その時点までの出来高 (EV) を 計画予算 (PV) で割った商が 1 であればプロジェクトは計画通りに進んでいると言えますが、もし 1 未満の場合は予算が出来高を超えていることになり、スケジュール効率が低いと評価することができます。
ETC (Estimate to completion) は残り作業の予算コストを算出したもので、「残作業コスト予測」と訳されます。
ETC = (BAC - EV) / CPI
総予算 (BAC) から現在までの出来高 (EV) を引いた数値をコスト効率 (CPI) で割って計算します。実際の出来高を使って算出するこの ETC は、同じペースでプロジェクトを進めていった場合に「残りいくら必要なのか」を判断するときに有効です。
EAC (Estimate at completion) は「完了時コスト予測」と訳され、現時点で予測されるプロジェクトの総予算のことです。
EAC = AC + ETC
EAC は残作業コスト予測に実コストを足して算出されます。単なる現状把握だけでなく、将来的な予測も可能な EVM ですが、EAC はその良い例のひとつと言えます。
VAC (Variance at completion) はプロジェクトが完了したときの予算コスト差異を表す指標です。
VAC = BAC - EAC
この「完了時コスト差異」がプラスであれば予算内でプロジェクトが進んでいくことを表し、マイナスであれば予算を超過していることがわかります。差異が大きい場合は作業効率の見直しや改善を図りましょう。
EVM (アーンドバリューマネジメント) について解説しました。EV の意味や重要数値の算出方法などを理解して、効率的なプロジェクトマネジメントを行いましょう。EVM 管理を導入しコストとスケジュールという 2 つの要素を把握、管理することで、より有益なプロジェクトを運営することができるはずです。
記事: 施工管理とは何か?仕事内容や必要なスキル、資格などをまとめて解説EVM を導入する場合は、チームで共有するプロジェクト管理ツールがあるとなお有効でしょう。その場合、部門をまたいだチームメンバーとデータやファイルなどの成果物を簡単に共有できたり、コミュニケーションを円滑に行うことができるツールをおすすめします。
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