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取引型リーダーシップは、チームに直接指示を出し、特典や報酬でモチベーションを高めます。このリーダーシップスタイルは、短期的な追い込みや緊急事態に有効ですが、慎重に使用する必要があります。この記事では、取引型リーダーシップのメリットとデメリット、使うべき場面、また代わりに使えるスタイルについてご紹介します。
Asana では、よくリーダーシップが話題に上ります。チームに影響を与え、やる気を引き出し、励ますことは、リーダーの責任です。チームメンバーが成功するためのリソースや、いい仕事をするのに必要な構造を提供したいとリーダーは考えているはずです。しかし、「仕事の解剖学」インデックスによると、組織によく理解してもらえていると感じているナレッジワーカーはたったの 15% でした。リーダーの多くがチームとの会話を始めますが、会話を維持することや、具体的なアクションに落とし込むことに苦労しています。チームの声を聞くだけで実際に行動に移せないと、チームがストレスを感じたり、明確性が失われたり、時には燃え尽き症候群 (バーンアウト) の原因となることもあります。
リーダーのあり方は一つではありません。優れたリーダーは、複数のリーダーシップスタイルを使い分けています。取引型リーダーシップはその一つであり、特定のタスクや状況下でうまく使うことで、チームメンバーが優れた能力を発揮しやすくなります。この記事では、取引型リーダーシップとは何か、どんな場面で使うことができ、どんな場面では他のリーダーシップスタイルを使うべきなのかについて解説します。
現代の職場は精神的に雑然としていて、「常にオン」の状態です。毎日、曖昧な優先順位、重複する仕事、仕事のための仕事などであふれる混沌とした状況の中で、明確性が失われています。昨年は、ナレッジワーカーの 10 人に 1 人が一度は燃え尽き症候群を経験したと答えています。加えて、世界中のナレッジワーカーが適切な時間に適切な仕事に集中できず苦労しています。2019 年と比較すると残業時間が毎日 2 時間近く増えているにもかかわらず、26% のタスクが期日に間に合っていません。
リーダーであるあなたには、チームを正しい方向へ導く権利があります。リーダーが行える大事なことの一つは、チームが日々の目標を会社の目標と結びつけられるようにすることです。自分の仕事が会社のミッションやビジョンにどのように関連しているのか、その全体像を少しでもチームに伝えることで、チームがうまくタスクに優先順位をつけ、インパクトの大きな仕事を成し遂げる助けとなります。
リーダーシップスキルの向上は、マネジメントスタイルの構築と同様、生涯にわたるプロセスです。しかしまずはその第一歩として、ここではすぐに実践できる 5 つの主要なリーダーシップの知識をご紹介します。
他人に任せないのは悪いこと あなたにとっても、自主性を持ち多くのスキルを学べるかもしれない人々にとっても、タスクを抱えすぎてしまうのはよくありません。
全員がパートナーであることを認識する 全員があなたのやろうとすることをサポートするパートナーであり、敵ではないことを認識しましょう。
自分が思っている以上に、メンバーに同意していることを認識する あなたが同意できないのはおそらくその問題を別の角度から見ているからであり、それは本当の対立ではありません。
完璧主義になりすぎない 厳密にどの決断がベストなのかわからなくても、決断を下しましょう。決断に時間をかけすぎるとエネルギーを消耗してしまいます。
定期的なチェックポイントを設けて振り返る 常に目の前の作戦だけを考えるのではなく、チェックポイントを設けて俯瞰的に考える時間を作りましょう。
取引型リーダーシップとは、秩序、構造、目標志向の計画を重視するリーダーシップスタイルです。取引型のリーダーはチームにやるべきことを直接指示します。そのため、このリーダーシップスタイルでは現状に挑戦することよりも現状を維持することが重視されます。
このタイプのリーダーシップでは、報酬システムを使ってチームのモチベーションを高めることがよくあります。取引型リーダーシップでは各チームメンバーの自己利益に訴え、特典や報酬のためにいい仕事をするよう促すことによって機能します。場合によっては、必要になるまでリーダーが動かない自由放任型と組み合されていることもあります。
Asana の企業価値観の一つとして、「自分にも他人にも誠実でいる」ことを重視しています。ですから、ここで本当のことを書きますが、取引型リーダーシップはあまり頻繁に使うべきものではありません。取引型のリーダーは行動や達成に基づく報酬など、外発的な動機付けとそれに付随する報酬を用います。このタイプのリーダーシップのメリットは、お金や評価など、人々にとって重要と思われるもので最初にモチベーションを高められることです。その一方で取引型リーダーシップには、メンバーが報酬獲得のために、その短期間の目標の達成に集中してしまうというデメリットがあります。
そのため、取引型リーダーシップは、集中力を要する場面や緊急事態に適したリーダーシップスタイルと言えます。取引型リーダーシップでは意思決定者はただ 1 人です。これは、あなたとチームが限られた時間で短期的な目標を達成しなければならない場合に有効です。しかし、オープンで協力的な職場環境を作るためには、より総合的に従業員のパフォーマンスを評価する他のリーダーシップスタイルと組み合わせることが重要です。
取引型リーダーシップが使われるチーム
セールスチーム 歩合制のセールスチームは取引型リーダーシップの形をとっています。セールスチームのメンバーはノルマを達成すると報酬がもらえる一方で、四半期の目標を達成できないと是正措置が取られる場合もあります。
スポーツチーム 多くの場合、大会での成績など個人的な報酬を得るために厳しいトレーニングなどをチームに強いる、取引型リーダーシップの形をとっています。
緊急事態や危機的状況 全員が団結して短期的な目標をすばやく達成する必要がある場合には、取引型リーダーシップが有効です。この形の経営リーダーシップは、実行可能な解決策について繰り返し検討するのではなく、すぐに問題に対処する必要がある場合に最適です。
最終的に気になるのはこの取引型リーダーシップを使うべきかどうかでしょう。他のリーダーシップスタイルと同様、取引型リーダーシップにもメリットとデメリットがあります。取引型リーダーシップを (慎重に) 使うべき理由と、使うべきではない場面に関するヒントをいくつかご紹介します。
取引型リーダーは、特定の (一般的には短期間の) 目標達成に向けて取り組みます。そのため、そのリーダーが率いるチームもその目標に一点集中する傾向にあります。明確性と短期的な集中力が特徴で、チームメンバーは目標に到達するためには何を優先すべきか理解しています。
短期間であれば、この明確性の高さが特定のタスクに集中するのに役立ちます。Asana の調査によると、昨年燃え尽き症候群を感じた社員の 29% が、その理由としてタスクや役割が明確でないことを挙げています。取引型リーダーシップでチームに明確な目標を与え、やるべきことを指示することで、そういった不安を取り除き、正しい優先順位でタスクに集中できるようサポートできます。たとえば、取引型のリーダーは「今月中に記事を何件投稿する」、「一週間で顧客何人とつながる」といった目標を設定できます。
記事: 厳しいスケジュールと変化する優先順位を管理する 4 つのコツ取引型リーダーシップを用いる場合、チームが目指すべき明確な目標を伝える必要があります。しかし達成可能と感じられるような目標は、短期目標になりがちです。
それが、時と場合に応じて色々なリーダーシップを試してみるべき理由です。取引型リーダーシップはチームに短期的思考を促しますが、リーダーはチームの長期的目標の計画もサポートしなくてはなりません。そのためには、自分をただのリーダーではなく、コーチとして考えることが重要です。マネージャーとしてだけではなくコーチとしてメンバーをサポートすることで、チームは長期的な目標を設定できます。長期的な目標を設定してチームのスキルを向上させる方法について詳しくは、チームのコーチング方法に関する記事をお読みください。
チームやメンバーのやる気の上がり方にもよりますが、取引型リーダーシップは短期目標の終わりに報酬を設定することでモチベーションを向上させます。この手法は、セールスチームの歩合制という形で最もよく利用されています。たとえば、セールスチームでは販売サイクルの終わりに最も多くの電話予約を獲得したチームメンバーに、少額の即時ボーナスが与えられます。
取引型リーダーシップは一部のメンバーのモチベーションを高めることはできますが、報酬や特典によってどのメンバーもモチベーションが上がるというわけではありません。さらに、メンバーのモチベーションが高かったとしても、取引型リーダーシップではメンバーが自分の役割を超えて活躍したり、創造性を発揮したりすることはできません。
これが取引型リーダーシップのみに頼り、チームに対し一貫してこのリーダーシップを導入し続けるべきでない理由です。効果的にモチベーションを与え、サポートを行い、少なくとも一部のプロジェクトでは創造性を発揮する機会を与えましょう。これは、メンバーのモチベーションを高め、最良の成果を出すために重要な要素です。従業員の 44% が、2021年に高いモチベーションでよい仕事を成し遂げるための要因として、「やりがいのある楽しい仕事に携わること」を挙げています。
取引型のリーダーとして短期目標を設定する際には、それを達成するための明確な目標とガイドラインも設定する必要があります。このガイドラインには、目標を達成すべき時期や目標に影響を与える可能性のあるリスクや依存関係、目標達成までのプロジェクトマイルストーンなども含まれます。
こういった詳細な情報を前もって提供することは、明確な目標のないチームに対して特に有効です。自分たちが何を目指しているのか、どうやってそこに到達するのかを正確に知ることで、チームメンバーはその期間の終了時に成功や効果を評価しやすくなります。
取引型リーダーシップは現状の打破に挑戦するのではなく、現状を維持する傾向にあります。このタイプのチームには明確な命令系統があるため、クリエイティブなチームには向いていません。最終的な目標や短期目標の設定をあなたに頼っている場合、チームが試行錯誤したり既成概念にとらわれない発想を生んだりするとは考えにくいでしょう。
この問題を解決するには、多様な考え方を奨励する支援的な職場環境づくりが大切です。チームワークやコラボレーションスキルを高め、社内で部門を超えた関係を築けるようチームメンバーをサポートしましょう。
記事: チームによるコラボレーションの効率をアップさせる 10 個の簡単な手順変革型リーダーシップでは、リーダーはチームと協力して物事に取り組み、実行に移します。変革型のリーダーは意思決定プロセスを中央集権化せず、直属の部下に自主性と権限を与えることを優先します。
取引型リーダーシップと変革型リーダーシップはよく比較されますが、これはどちらか一つしか使えないような、誤った認識の原因になっていると考えられます。実際には、すべてのリーダーシップスタイルから何かを学ぶことができるのです。
変革型のリーダーは常に未来を見据え、「既成概念にとらわれない」考え方のもと、新たなアイデアを会社に導入することを目標としています。変革型のリーダーはメンバーの意欲を引き出し、各自のカリスマ性を重視することで従業員をサポートし、励まし、やる気づける傾向にあります。
このタイプのリーダーは魅力的に聞こえるかもしれませんが、実際に変革型のリーダーは魅力的である傾向にあります。変革型のリーダーの下で働くのはチームメンバーや従業員というより「信者」だと言われることもありますが、それは変革型のリーダーが直属の部下にとっての模範となる傾向があるからです。取引型リーダーシップと同様、このタイプにもメリットとデメリットがあります。変革型リーダーリップでは意思決定権をトップに集約せずチームに委ねますが、Journal of Applied Psychology に掲載された研究では、この変革型リーダーシップは取引型リーダーシップと比べて仕事の満足度やパフォーマンスが低いという結果が出ています。
優れたリーダーは、状況や従業員、プロジェクトの特定のニーズに合わせてリーダーシップスタイルを変えます。チームメンバーもそれぞれなので、効果のあるスタイルや環境も異なります。リーダーとしてベストな対応は、それぞれのメンバーにとって一番効果的な動機付けの要因を特定し、それを利用してサポートすることです。
それでも、取引型リーダーシップの利用は控えめにしましょう。このリーダーシップスタイルは変革型など他のリーダーシップスタイルと比べて創造性や柔軟性に欠ける傾向にあります。しかし、取引型リーダーシップはチームに明確性と、目標へ向けた集中力をもたらします。このリーダーシップを計画的にうまく取り入れることで、チームを成功に導くことができるでしょう。
もっと詳しく知りたい方は、状況対応型リーダーシップに関する記事をご覧ください。