S&OP (販売操業計画) は、組織の全領域を通じて一貫性と連携を図るための 6 つのステップから成るプロセスです。各ステップの内容とこの種の計画がチームにもたらす効果を解説します。
あなたの組織では、チームの足並みを揃えることに苦心していませんか?これは多くのプロジェクトマネージャーが直面する問題です。幸い、この問題には解決策が存在します。
S&OP は、経営陣が組織全体を通じて一貫性と連携を達成するための 6 つのステップから成る業務プロセスです。この経営管理手法では、サプライチェーンや製品需給の整合性を取ることから、必要に応じてニーズを調整することまで、あらゆる要素を連携させます。複雑に感じられるかもしれませんが、各ステップを解説したこのガイドを使用すれば、組織内の明確性と連携性を高められます。
この記事では、プロセスの各ステップから、S&OP プロセスの導入によるビジネス効果まで、あらゆる側面を解説し、今すぐ開始できるプロジェクト計画テンプレートを提供します。
S&OP プロセスの最初のステップである予測では、将来の販売業績を的確に予測するために必要なデータを収集します。収集するデータの種類は、目的により異なりますが、たとえば、既存のプロセス、キャッシュフロー、在庫などの社内要因に加え、業界動向や競合他社などの社外要因なども含まれます。
このような初期の予測により、S&OP を的確に計画、実施し、正確な最新データを用意できます。社内予測や社外予測の他にも実施できる予測手法がいくつかあります。たとえば、リード分析、商談フェーズ、直感的プランニングなどを使った予測手法があります。
どの予測手法を使うかは、あなた次第であり、最適な手法が見つかるまである程度の試行錯誤が必要かもしれません。どれを選ぶかに関わらず、予測結果に基づき製品需要を調整する 2 番目のステップに向けて十分なデータを収集することを目指しましょう。
リード分析による予測では、クオリファイドトラフィック (資質があると見なされるトラフィック) を売り上げに転換するために、顧客との関係構築とリードソース (リードを獲得した媒体) の分析に焦点を当てます。各リードを数値化することで、収益創出の予測と売上予測の精度を高められます。
下表の例のようなセールスパイプラインテンプレートは、リードの記録、進捗の追跡、優先度決定に役立つシンプルなワークフローです。過去のパイプラインを分析すれば、将来の売り上げを予測できます。
この手法には、以下の分析が含まれます。
リード獲得数
獲得リードのコンバージョン率
リード 1 件当たりの収益
リードを獲得した媒体
このデータを過去数か月または過去数年間分を対象に分析すれば、S&OP に含めるべき数字を的確に予測できます。
商談フェーズに基づく予測では、各セールスパイプラインをフェーズに細分化します。セールスパイプラインとは、今後の販売機会における営業の流れをまとめたものを指します。販売機会の振り返りを継続的に実施すれば、顧客ライフサイクルの各ステップを対象に、現実的な計画や明確な戦略を策定できます。
セールスパイプラインを可視化すれば、収益やキャッシュフローを予測し、リソースのギャップを発見し、スキルの不足を特定できます。これを行うには、パイプラインを以下の 8 つのフェーズに区分しましょう。
見込み客開拓: このフェーズでは、見込み客を絞り込み、その企業や担当者とコミュニケーションを開始します。通常これは最初の会議で完了します。
デモンストレーション: 第 2 のフェーズでは、会議を活用して見込み客に対しエレベーターピッチとデモンストレーション (製品実演) を行います。
調査: 調査フェーズの際には、製品実演を通じて得た情報を使い、製品またはサービスが見込み客のニーズと合致しているかを判断します。
トライアル: ニーズへの合致を確認したら、顧客の問題を解決する製品であるかを試用により判断していただきます。
提案: 顧客が製品を使用することを希望する場合には、提携に関する提案を価格を含む詳細と共に送付します。
障害: 顧客の会社において製品を導入後、初期に障害が発生した場合には、協力してその解決を図りましょう。ここでいう障害とは、契約関連の問題と製品に関わる問題の両方を指します。
交渉: 障害を解決したら、提案に最終的な変更を適宜加えた後、必要な法的文書を用いて契約を締結します。
契約の獲得または損失: 商談が成功すれば、提案が署名、承認され、クロージング (契約成立) となります。提案が受け入れられなかった場合は、販売機会の損失と見なされます。
各パイプラインを上記のフェーズに区分した後、営業チームはデータを分析し、将来の結果を予測します。
直感的な販売予測は、営業担当者から口頭で与えられるデータを基に行います。この予測手法を使用するには、パイプラインの新規リードについて営業チームとコミュニケーションを取り、それらのリードからの収益を予測し、その取り引きが成約する確率のパラメーターを設定しましょう。
他の 2 つの手法と比べると主観的ではあるものの、直感的予測は、精度が高く正確な予測よりも、素早い大まかな予測を求めているチームにとっては最適な手法です。また、分析対象となる過去のデータがない会社にとっても適切な選択肢です。
S&OP プロセスの次のステップでは、前のステップで収集した予測データを基に、需要を調整します。社内外の要因に基づき予測データを分析し、必要に応じて在庫量を調整します。そして、その情報を使い、プロジェクトスケジュールを作成します。
効果的な需要計画のプロセスは、以下 3 つのステップから成ります。
販売促進
製品ポートフォリオ管理
統計解析
このフェーズでは、目指す需要を達成するために、価格インセンティブやコスト変更などの手段を導入する「デマンドシェーピング (需要形成)」の実施も選択できます。これは、効果的ではありますが、必ずしも必須の要件ではありません。
販促管理とは、販促費の計画と処理のことを指し、ソフトウェアツールを用いて行われる場合もあります。販売促進は、需要計画の際に、特別価格を製品に適用することにより、その製品の需要を高めるために実施されます。
販売促進には、以下のようなさまざまな活動が含まれます。
割引: 企業で使われる最も一般的な販売促進の 1 つに割引があります。割引とは、1 つまたは複数の製品の価格を引き下げることにより販売を誘因することを指します。
バンドル: バンドルプロモーションとは、複数の異なる製品群を別個に売る代わりに併せて販売することを指し、割引価格で行われる場合もあります。複数の異なる製品を購買する誘因となるだけでなく、製品を組み合わせるメリットを示すためにも有効です。
リベート: リベートとは、製品購入後の割引のことを指します。消費者が何らかの方法で、申し込みや送付を行う必要があるので、完了率が5~80% と比較的低めです。
コンテスト: プロモーションの別の方式として、懸賞などのコンテストを通じて行う方法があります。懸賞キャンペーンでは、購入者を対象に無料の製品や現金などの賞品を贈与します。
販売促進は、マーケティングと深く絡み合っていますが、マーケティングでは、各種の異なる業績指標に目を向けるのに対し、販売促進では、直接販売を促進することのみに注力します。上記の手段を導入すれば、製品の需要を高めることにより売り上げも促進できます。
製品ポートフォリオ管理を行えば、自社が販売する製品 (製品ポートフォリオ) をあらゆる側面から管理できます。業績評価から製品価値の優先度決定まで、さまざまな側面から製品を管理します。
製品ポートフォリオ管理の一環として、こんな取り組みがあります。
製品の整理: サービス内容、ブランド、独自性、価格に基づいて製品を整理し、製品ポートフォリオをまとめます。
製品の分析: 市場における位置づけとポートフォリオ拡大への貢献度に基づき製品を分析します。
採算性が低い製品を排除: 採算性が低い製品を排除することにより、ポートフォリオのパフォーマンスを維持し、その価値を着実に成長させます。
リソースの割り当て: 市場の需要に対応するために、製品開発に向けたリソースの割り当てと計画を行います。
製品ロードマップに関わる上記の業務は、ポートフォリオマネージャーが統率し、効率化のために適切なツールをチームに提供します。
統計解析とは、パターンや動向の特定を目的としたデータの収集や解釈のことを指します。統計解析では、製品の需要を変える必要性を洗い出すために、データ分析を実施します。
統計解析は以下のステップにより実施します。
データの内容を特定する
市場動向に対するデータの関連性を調べる
市場動向に対するデータの関連性の概要をまとめる
その関連性の真偽を実証する
これらのステップを行えば、需要、価格、市場需要などの製品データに関する総合的な理解につながります。それにより、戦略計画を明確化し、需要計画をデータで裏付けられます。
チームを横断するコラボレーションは、財務、オペレーション、製品の各部門のリーダーが、サプライチェーンのニーズを調整するために協議する、供給計画を行う際に重要な役割を果たします。
このステップでは、過去の在庫調整に基づき、人員、業者、機器、テクノロジー面の制約がないかを判断することを図ります。それらの要因を分析することにより、チームは必要な変更をまとめた供給計画を作成できます。
簡単な変更のみが必要な場合には、ビジネスケースに似た構成の供給計画を作成します。それ以外の場合には、供給に関わる関係者との定期的な会議を計画し、チームの認識を揃えましょう。また、サプライチェーンと企業資源計画の統合、最終顧客の行動の予測、データの活用などを含むさらなる対策も実施できます。
供給計画では、需給のニーズを調整するのに対し、企業資源計画では、製品供給の戦略目標と業務目標を管理します。
サプライチェーンの目標とニーズの双方を統合すれば、経営から消費者までの全領域を連携し、同じ成果を目指した予測を行えます。
S&OP における初期の予測フェーズでは、社内データに基づいて需要と供給を予測するかもしれません。しかし、供給フェーズでは、最終顧客に関するデータに基づいて需要を予測します。
その際には、これまでの予測により得た社内データと顧客に関して収集した社外データを評価します。その社外データは通常、購買行動、顧客がよく利用する競合他社、ターゲット市場調査など、顧客のパターンを追跡することにより得られるものです。
初期のフェーズで収集したデータがサプライチェーン全体で適切に活用されるようにするためには、供給計画の段階でリアルタイムの最新データを使用する必要があります。
これは手動でも行えますが、データ収集を自動化し、消費者プロフィールに正しい情報を割り当てるビジネスプロセスオートメーションなどの AI (人工知能) ツールを使うこともできます。
このようなデータを収集すれば、サプライチェーンのプロセスの調整を通じて効率性を高め、必要に応じた在庫調整を実施できます。
予測と製品に関する計画を完了したら、初回のキックオフミーティングを開催して導入プロセスを開始できます。この会議は、前のフェーズに関わった各部門長が、人事、マーケティング、営業など、変更により影響を受けるチームと変更内容について話し合う機会となります。
会議の議題テンプレートを使えば、重要な討議事項を確実に話し合えるよう初回会議に向けて準備できます。
この会議の際には、以下のような議題について話し合いましょう。
これらの変更により生じる財務的な影響はどのようなものか?
キャッシュフローに対してはどのような影響があるか?
ビジネスの不確実性を防ぐために有効か?
この会議の目的は、供給の変更による財務および顧客に対する影響を検討することです。これらの検討事項にすべて 1 人で対応できる人はいないので、各リーダーを必ず招き、それぞれの専門的な知見を共有してもらいましょう。
初回会議を完了し、変更により想定できる影響を特定し、十分な対策を講じたら、次に役員会議を開催します。役員会議の目的は、上記の供給変更計画 (総合 S&OP 計画) に対する役員の承認を得ることです。
初回会議はすでに完了しているため、役員に必要な情報を提供することは簡単なはずです。討議内容の予定をまとめた会議の要旨を 1 日前に参加者に送付してもよいでしょう。
提案が受け入れられなかった場合には、当初のプロジェクト計画に変更を加える必要があります。承認を得た場合には、S&OP の実施に移ることができます。
S&OP プロセスの策定を完了し、実施を開始するには、適切なプロジェクト関係者にタスクを委任する必要があります。また、情報を共有スペースに保管することで、チーム全体に対して可視化し、情報源へのリアルタイムのアクセスを提供しましょう。
タスクを完了し、S&OP の導入を終えたら、需給システムの継続的なモニタリングを行いましょう。需給システムはキャッシュフローに影響を及ぼすので、財務的なリスクから会社を守るためにも、このモニタリングはとりわけ重要です。
モニタリングを実践するには、以下のような KPI (重要業績評価指標) を評価しましょう。
需要と生産量の予測
在庫回転率
設備稼働率
納期遵守率
配送精度
総売上
売上総利益
キャッシュフロー
上記の変化を継続的にモニタリングすれば、利益に悪影響が及ぶ前に問題をリアルタイムで是正できます。
S&OP 計画の導入は、会社のさまざまな領域において好影響につながる可能性があります。バリューチェーンの効率から、部門横断のコラボレーションやチームワークまで、S&OP を実施すれば全体的な販売戦略を向上できます。チームに対するメリットや効果を以下に一部紹介します。
SOP 計画を導入すると、経営陣による業務の連携状況の分析が頻繁に行われるため、各部門のバリューフォーカス (価値の焦点) に一貫性を持たせることができます。
これは、組織における明確性をトップダウンで実現させるために重要であるだけではなく、問題解決や困難な意思決定をより容易にする効果があります。その理由は、価値のありかと、そこに到達するために必要なステップが、全員にとって明らかだからです。
チームに対する効果: 社内のチームと社外の顧客に価値を提供することに加え、データに裏付けられた一貫性のあるビジネス計画を簡単に作成できるようになります。
大規模な組織では、さまざまなチームがサイロ化され、サプライチェーンを可視化することが困難な傾向があります。S&OP を使えば、各部門長が可視化されたサプライチェーンマネジメント計画にアクセスできます。そのため、同じ可視性を下層部 (現場) のチームメンバーに対しても提供する選択肢が生まれます。
供給を可視化するメリットは、各部門が組織の需要計画に基づいて意思決定を行えることです。
チームに対する効果: 生産計画と納期の効率化につながるため、顧客満足度と売り上げの向上を支えられます。
S&OP のもう 1 つの主要なメリットは、チーム、部門、リーダー間のコラボレーションを強化できることです。これは、ビジネスのさまざまな要素の整合性をとるために、リーダー間のチームワークが繰り返されることによる直接的な結果です。
部門横断のコラボレーションを行えば、より一貫性のある部門間の連携を実現でき、チーム志向の楽しい環境を培えます。
チームに対する効果: 部門横断のコミュニケーションと効率性を向上できるため、期限超過を減らし、製品ライフサイクルを加速できます。
記事: 職場で効果的にコミュニケーションをとる 12 のコツS&OP のソリューションを開始するためには、ソフトウェアツールを使って、タスクを効率化、自動化することをおすすめします。また、ソフトウェアツールを使えば、情報を 1 つの場所で調整できるため、チームの拠点に関わらず、リアルタイムでアクセスできます。
タスクを 1 つの場所で追跡し、管理するために、販売計画テンプレートを使用しましょう。このテンプレートを関係者と共有すれば、複数のチームの間で計画を調整し、プロジェクト目標の明確性を維持できます。
S&OP ソフトウェアを導入する際には、最大限に効果的な計画を策定するために、在庫計画、需要計画、供給計画など、サプライチェーン計画のその他の要素も同時に統合することをおすすめします。
より効果的な S&OP プロセスを作成するために、特定のニーズに応じて導入できるソリューションを以下にいくつか紹介します。
販売プロセスと業務プロセスの拡大を図っている大規模な会社では、無駄をなくし、できる限り多くのタスクを自動化することが重要です。それにより、より効率的なプロセスを生み出し、時間を要するチームにその分時間を与えられます。
大規模な会社の拡大を図る際に検討できるソフトウェア機能を以下にいくつか紹介します。
自動化: ビジネスプロセスオートメーションを行えば、手作業をなくすことにより、チームの時間を節約し、組織全体を通じて効率性を高められます。
リスク管理: プロジェクトの無駄を減らすためには、リスクの発生を未然に防ぐ必要があります。リスク登録簿を使えば、リスクにつながる問題をリアルタイムで追跡できます。
分析: プロジェクトの事前、最中、事後に分析情報を評価すれば、継続的改善を促進できます。
他にも S&OP ツールの機能はありますが、ビジネスの成長に向けてしっかりと計画を策定するためには、上記の実践が特に重要です。
サプライチェーンマネジメントは、複数の変動的な要素から成るため、ソフトウェアを導入すれば、既存の製品開発プロセスを効率化し、向上できます。
サプライチェーンを向上させるためのソフトウェア機能には、以下のようなものがあります。
製品計画: 適切なツールがあれば、チーム内の計画とコミュニケーションの手段を提供できるため、新しい製品のリリースを円滑化できます。また、納期を遵守するために、チームの進捗を追跡することにより、在庫管理プロセスを向上できます。
予測: 効率的なサプライチェーンを形成するためには、予測の精度が不可欠です。予測精度は、社内用の予測においてももちろんですが、それ以上に、顧客のニーズに対応する際にマイナスの顧客体験を防ぐために重要です。適切なツールを使えば、理解しやすいデータを視覚的なスプレッドシートで提供できます。
生産: 生産に関するニーズには、販売計画から製品調達やリードタイムまで、さまざまな要素が含まれます。S&OP ソフトウェアを使えば、こういったタスクを整理し、生産に関わる依存タスクの完了をチームメンバーに伝える通知を設定できます。
一番のポイントは、最適なツールを見つければ、サプライチェーンの利益を向上できることです。
チームの主要な成功要因は、コラボレーションです。チームの協力をサポートすれば、透明性と責任意識を高められます。
適切なソフトウェアツールから得られる機能を以下に一部紹介します。
一元的なコミュニケーション: 適切なツールの要件として、コミュニケーションを 1 つの場所で行える必要があります。それにより、プロジェクト、タスク、戦略計画について、チーム間で簡単に連携できます。
タスクの割り当て: タスクに担当者を割り当てれば、責任意識が生じ、仕事の見落としを防ぐためにタスクの依存関係も整理できます。
仕事と目標の整合性: 仕事をプロジェクト目標に結びつければ、チームメンバーの足並みを揃え、OKR (目標と主要な結果) を常に最優先に位置づけられます。
タスクリマインダーの自動化: コラボレーションソフトウェアを使えば、不要な手作業が生じないよう、リマインダーを自動化し、適切な関係者に通知されるよう設定できます。
コラボレーションは、さまざまなビジネス領域において有効ですが、組織内の複数のチームを連携させるしっかりとした S&OP 計画を作成するためには、特に重要です。
S&OP プロセスを導入すれば、チームそして最終的には組織全体の一貫性を維持できます。バリューチェーンの効率化から、部門横断のコラボレーションの向上まで、S&OP を使用すれば、ビジネスを新たなレベルに引き上げられます。
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