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初めてプロジェクトマネージャーになった人でも、経験豊富なチームリーダーでも、「チームにいい仕事をしてほしい」という思いは同じです。コラボレーションを行い、コミュニケーションを取りあい、一人ひとりが気持ちを通じ合わせて無理せずベストな仕事をしてほしい。でも、自分のチームがうまくいっていない場合はどうすればよいチームワークを生み出せるのでしょうか?
そこで役立つのがグループダイナミクスです。よいグループダイナミクスにつながる要因を理解すれば、グループはもっと明確なコミュニケーションを取り、効果的にコラボレーションを行い、よりインパクトの大きな仕事を協力して成し遂げることができます。
グループダイナミクスとは、共に働く人々の間の交流、態度、行動を指します。この用語は、社会心理学者のクルト・レヴィンが変化する状況に応じたグループの行動や反応を説明する際に初めて用いられました。
グループダイナミクスは突然生まれるものではありません。人々が仲間との関係性の中における自分を理解していくうちに育っていくものです。たとえば、グループでの共同作業が快適に行える状況であれば、それはポジティブなグループダイナミクスのおかげかもしれません。一方で 2 人の人がプロジェクトをリードしようとしていて、お互いにもう一人の意見を聞いていないような状況であれば、そこにはネガティブなグループダイナミクスが存在するかもしれません。
Asana では、優れたグループダイナミクスは優れた企業文化から始まると考えています。チームメンバーがありのままの自分でいることを歓迎されていると職場で感じることができれば、より効果的なコラボレーションやコミュニケーションが可能になります。
記事: Asana のダイバーシティ、インクルージョン、公正への取り組みグループとは、一緒に働く人々の集まりのことです。これには同じマネージャーの下で働くチームメイトや部門を超えたプロジェクトチーム、オフィスのメンバーといった公式の集まりも、共通の趣味や考え方を持つ同僚の集まりなど非公式の集まりも含まれます。
たとえば、Asana では Employee Resource Groups (ERG) と呼ばれる非公式のグループを作っており、従業員の 3 分の 2 以上が 1 つ以上の ERG に参加しています。ERG ではさまざまなコミュニティをサポートすることによって、従業員が機能的なグループを超えて集まることのできる、安全でポジティブ、そしてインクルーシブな空間を作り出しています。
ブルース・タックマンは、1965年に発表した Tuckman's stages of group development (タックマンのグループ形成段階) という理論で、グループ形成の仕組みについて初めて説明しました。その中でタックマンは、グループの形成には 5 つの段階があると述べています。
形成期: これは、グループが初めて集まる段階です。特定のプロジェクトに取り組んでいる場合は、プロジェクトの目標を設定したり、プロジェクト計画を立てたりします。この形成段階では、グループメンバーは互いに独立していて、メンバー同士の会話も礼儀正しいながらもよそよそしい状態です。
混乱期: 2 つ目の形成段階は何らかの形での意見の不一致から始まります。この意見の不一致は、グループメンバーがより積極的に意見を共有し、互いに正直になるきっかけとなります。この正直さによって、グループのメンバーは互いに信頼し合うようになります。
統一期: 初期の意見の不一致や対立が解決すると、グループ間の交流は協力的で友好的になります。グループは、この形成段階では議論したり記録したりしなくても、グループ規範を確立し始めます。形成期のそれぞれが独立した状態とは違い、統一期のグループはグループでの意思決定に積極的で、グループのまとまりを優先します。そんな統一期には、実はメンバーが自分の意見を共有することをためらい、その結果活動が停滞してしまうという危険性が潜んでいます。
機能期: これは、グループが最高の状態にある段階です。グループメンバーは独立して作業を行うことも、グループとして問題解決に取り組むこともできます。それぞれのメンバーが他のメンバーにどう思われるかを気にせず、グループの目標に集中します。
散会期または追悼期: タックマンは 1977年にこの段階を追加し、プロジェクト終了後のグループの分離を説明しました。グループがうまく機能していた場合、グループ構造が解散すると喪失感を感じることがあります。
よいグループダイナミクスはチームワークの障壁を減らし、コラボレーションやコミュニケーションを可能にします。会話の流れがスムーズになると、一緒に働くのが楽になります。しかし、その状態に到達するには時間と訓練、そしてサポートが必要です。
グループダイナミクスは、コミュニケーションとコラボレーションをよりよくするための一つの道具です。グループがなかなか思うように前へ進まない場合は、グループダイナミクスを育むことでグループの生産性を向上させ、目標を達成することができます。
曖昧なコミュニケーションが混乱や対立、ネガティブなグループダイナミクスを引き起こすことはよくあります。コミュニケーションの期待値と手段を明確にすることで、チームは明確で効果的なコミュニケーションを行うことができます。
まずはコミュニケーション計画を作成して、チームメンバーがいつどの手段を使うべきか、それぞれの詳細情報をどれくらいの頻度で伝えるべきか、また各手段の責任者を明確にすることから始めましょう。例として Asana ではこんな手段を利用しています。
メール: 外部のお客様やパートナーとのやり取り
Slack: 日々の最新情報に関するリアルタイムのコミュニケーションやチームメンバーに対する簡単な質問
Asana: タスクの詳細、プロジェクトのステータス更新、主要なプロジェクト文書など、タスクに関する非同期コミュニケーション
Zoom や Google Meet: ブレインストーミングなどのチームミーティング
グループにネガティブなダイナミクスが存在すると、メンバーは物事を成し遂げるのに苦労します。極端な場合では、ネガティブなグループダイナミクスが人の心を傷つけ、対立解決が必要になってしまうこともあります。もしあなたのグループにネガティブなグループダイナミクスが存在しているなら、そのダイナミクスがどこから来ているのかを理解しましょう。そうすることで、問題の原因を特定し、解消に向けて取り組むことができます。
ネガティブなグループダイナミクスを解消するには、まずその兆候を認識しなければなりません。ネガティブなダイナミクスは、グループによってさまざまな行動や態度となって現れます。注意すべき兆候にはこんなものがあります。
メンバー間で頻繁に不満やいら立ちが発生している
お互いに接しにくいと感じているメンバーがいる
同僚との関係において混乱や葛藤を感じていたり、ネガティブな自己評価を持っているメンバーがいる
コラボレーションやコミュニケーションを行わないメンバーがいる
他のグループメンバーを排除する小さなグループやサブグループ、派閥がある
排他的な仲良しグループがある
ネガティブなグループダイナミクスを特定すれば、その原因に基づいて問題解決に取り組むことができます。以下では、ネガティブなグループダイナミクスの最も一般的な原因と、グループ内でそれを解決する方法についてご紹介します。
問題: グループメンバーは、特定のメンバーが自分の役割を果たしていないと感じている。
解決策: 社会的手抜きの原因を特定し、そのグループメンバーをサポートする。
社会的手抜きとは、グループで共同作業をするとあまり仕事をしない人が出るという心理的現象です。他のメンバーが仕事をしていないと感じられるような状況は、フラストレーションの原因となり、グループの士気も下がります。原因としてこの社会的手抜きが考えられる場合は、社会的手抜きが生産性の問題というよりも明確さの問題である理由と、その対処法に関するこちらの記事をお読みください。
問題: メンバーの受動的または攻撃的なコミュニケーションスタイルが良好なコミュニケーションの妨げとなっている。
解決策: グループメンバーがはっきりと (アサーティブに) 自己主張できるようにする。
コミュニケーションスタイルとは、メンバーがどのように他のメンバーと交流したり、コミュニケーションを取るかを表すものです。ご想像の通り、コミュニケーションスタイルの中には職場で対立を引き起こすものがあります。たとえば、攻撃的なコミュニケーションを取る人がいると、他のメンバーが自分の意見を言いづらくなります。消極的なコミュニケーションスタイルを取っているようなメンバーがいる場合は、なぜそういったコミュニケーションの取り方になっているのか、根本的な原因を特定することで、自信を持ってコミュニケーションが取れるようサポートすることができます。詳しい方法については、マネージャー向けコミュニケーションスタイルガイドをお読みください。
問題: グループメンバーが問題を創造的に解決できず苦労している。
解決策: 共同制作や反対意見を奨励することでグループのよいコラボレーションを促進し集団思考を防ぐ。
統一期の段階では、グループの団結力が強すぎて、互いに反対意見を言わなくなるというリスクがあります。協力して最良の解決策を生み出すためには、グループメンバーが一緒にアイデアを考える必要があるため、実はこの反対意見はコラボレーションにおいて重要な要素です。もしあなたのグループが新しいアイデアを出さず、流れに合わせていると感じられる場合は、自分がよりよいと思うクリエイティブなアイデアを考えてみるよう提案してみましょう。
問題: グループが混乱期で行き詰まっていて、グループの規範をうまく作れず、また守れていない。
解決策: 必要に応じて自分のマネジメントスタイルを見直す。
グループリーダーは自分のチームに独自のアイデアを生み出したり、創造的かつ革新的になれる場を提供したいものです。しかしグループのマネジメントを行う上では、完全な自由放任主義にならないように注意しましょう。なおかつ、グループが規範を築き、互いに理解し合えるだけの自由度も保てるようにしましょう。グループを正しい方向へ導くことと、グループに独自のプロセスを構築させることは紙一重です。迷ったときはグループの協力を仰いでも構いません。ただし最終決定権はあなたにあることを忘れないようにしましょう。
記事: マネジメントスタイルを活用してチームをサポートする方法ネガティブなグループダイナミクスに対処し、グループがより効果的に協力できるようサポートすることで、共通の目標を達成し、グループの士気を高めることができます。しかし、グループダイナミクスを支える上で最も重要なのは、グループに自分たちはただの人の集まりではなく、チームであると認識させることです。
グループとは、一緒に働く人々の集まりです。グループのメンバーはプロジェクト期間中一緒に働くことはありますが、必ずしも自分が全体の一部であると考えているとは限りません。一般的にグループのメンバーは目標によってゆるやかにつながっていますが、共通の目的や価値観を持って仕事をしているわけではないでしょう。
一方、チームとは共通の目的や同じ目標を持つ人々の集まりです。チームのメンバーは個人の成功だけではなく、チームの成功にも力を注ぎます。チームのメンバーは自分が大きなものの一部であると考えているため、グループのメンバーよりもモチベーションが高く、団結力があります。チームのメンバーは特定の目標を共有し、協力して達成に向けて取り組みます。
グループに自分たちはチームであると認識させるにはどうしたらいいのでしょうか?これは簡単な場合もあります。たとえば、部門をまたぐプロジェクトの目標に焦点を当てることで、その部門をまたぐグループをチームへと変えることができます。
明確な共通の目標がない場合もあります。たとえば、マネージャーが同じ人々のグループが、まったく別々の目標に向かって、まったく異なるプロジェクトに取り組んでいる場合などです。そういった場合はチームビルディングのアクティビティを使ってメンバー間の距離を縮めることができます。しかし、チームを作る最も簡単な方法は、価値観を共有することです。
価値観を共有することでメンバー同士がわかりあえるようになり、自動的に全員が 1 つのチームになることができます。価値観の共有ができていれば、形成期の段階を飛ばしてすぐにインパクトの大きな仕事に取りかかることができます。
記事: ビジネスの成功に拍車をかける文化をデザインした方法共通の価値観は、チームでも、部門でも、会社レベルでも確立できます。多くの企業にはすでに共通の価値観があるはずです。あなたの会社にもすでに共通の価値観がある場合は、その価値観が日々の仕事に取り入れられていることを確認しましょう。この価値観を共有していることをグループに思い出させることで、その共通の価値観こそが規範となり、統一期を飛ばすこともできます。全員が共通の価値観を持っているので一緒に働く方法探しに苦労することもなく、コラボレーションを実現できます。
Asana では、企業価値観がミッション達成の道しるべとなると考えています。世界中の Asana 社員は、同じ 9 つの企業価値観を共有しています。
ミッション Asana の社員は目的に突き動かされ、自分を超越する存在に尽くすことに専念しています。ミッションを私たちの価値観として具体化することで、私たちは常に信念を持って Asana の開発を継続できます。
素晴らしい仕事をすばやく成し遂げる: 私たちは最高の仕事を行い、かつそれを迅速に行います。どちらかが欠けることはありません。
明瞭さ: Asana の製品や文化は、誰が、何を、いつまでに、なぜ、担当するかをチームが把握できるようにすることを目指しています。それが最高の仕事体験と成果につながります。
共創: 偉業はたいてい 1 人ではなく大勢により成し遂げられるものです。私たちはベストを尽くし、エゴを捨て、お互いに共感と信頼を持って素晴らしい仕事を成し遂げます。
責任を負い、与える: 自分の責任に誠実でいることとは、胸が弾むような機会をつかむことでもあり、何かの優先度を下げなければならない場合にはその責任に基づいて決定するということでもあります。私たちは自分の責任が自分自身のものであることを完全に自覚し、同僚が責任を遂行する場合も彼らを信頼して権限を与えます。
マインドフルネス: 私たちは現在に焦点を置き、自分が学んだことを熟考して自分のものとするための時間と場所を確保します。これを実践することで、私たち全員が行うことすべてから学びを得て、自らの行動を改善し、Asana の企業文化を継続して発展させていくことができます。
見せかけのトレードオフに惑わされない: 私たちは好奇心を持ち、クリエイティブであり続け、新しい視点を進んで取り入れます。両極端のどちらかを選ぶと、どちらかの利点が失われてしまいます。両者の要素を統合する第 3 の方法を探すことに全力を尽くします。
自分にも他人にも誠実でいる: 最高の仕事とは偽りのない仕事であり、それが成長とコラボレーションを可能にすることを私たちは理解しています。私たちは自分らしく仕事に打ち込み、あらゆる人が安心して、ありのままの自分でいられるインクルーシブな環境を構築することに取り組んでいます。
心のこもった態度: 私たちは、人間らしさや、遊び心をもって楽しむこと、素敵な時間を過ごすことを目的に意義のある体験を作り上げることを大切にしています。タスクの完了をマークしたら、ユニコーンが飛ぶのはなぜかって?だって、ユニコーンが飛んでもいいでしょう?
共通の価値観は、チーム全員が納得できる信念の核を構築します。たとえば、Asana の共通価値観は「責任を負い、与え」ながらも解決策を「共創」すべきというグループの交流スタイルをすばやく確立するのに役立ちます。同様に、チームメンバーが大きなプロジェクトに取り組む際には、「見せかけのトレードオフに惑わされず」に、「素晴らしい仕事をすばやく成し遂げる」という方法を共有しています。さらにカジュアルな部分では、「心のこもった態度」や「マインドフルネス」といった価値観がチームやオフィスでの毎日の仕事に役立っています。
よいグループダイナミクスの作り方を理解するには時間がかかります。優れたコラボレーションやコミュニケーションのソフトスキルを用いることで、チームはベストを尽くせるようになります。可能な場面でできるだけ、共通の価値観を早期に作り上げることで、あなたのグループはチームに変わるでしょう。
詳しくは、職場での効果的にコミュニケーションに関する記事をお読みください。