チーム内の業務を可視化し、業務負担によってメンバーへの仕事配分を最適化。ルーティン業務の負荷分散や効率化に成功した
それぞれの業務の必要性や役割をより明確に理解するようになり、日常業務の中で気づいた細かな改善をボトムアップで進める意識が根付いた
ナレッジを蓄積していつでも参照できる環境が整い、問合せの抜け漏れ防止と対応スピードの改善を実現した
デジタルマーケティングやマーケティングリサーチを手掛けるクロス・マーケティンググループは、デジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりが追い風となり業績も好調です。事業を拡大するべくM&Aも積極的に進めるなど、成長を加速させるための投資も行っています。一方で急成長する企業におけるバックオフィスのオペレーションは、そうした変化に迅速かつ柔軟に対応することが求められます。グループの中核事業会社であるクロス・マーケティングの販売管理業務と月次決算処理業務を担当するコーポレート本部事業統括部事業統括グループ マネージャーの丹羽 貴大氏は、属人化して非効率なプロセスに陥ってしまっていた業務を改善するために「Asana」を導入しています。DX支援企業ならではのアジャイルなアプローチで推し進められた導入プロセスと活用法について詳しくお話を伺いました。
丹羽氏がマネージャーを務めるクロス・マーケティンググループのコーポレート本部事業統括部事業統括グループは、同社の経理部門と事業会社であるクロス・マーケティング社営業部門とのパイプ役となり、販売管理や月次決算処理に関するオペレーションの全てを担う部署です。また、社内システムやオペレーションに関する他部署からの問合せや要望に答えるのも事業統括グループの役割です。
「営業部からは顧客それぞれで異なる要望まできめ細かに対応したいがゆえの相談や問合せも多くあります。主要事業であるデジタルマーケティング支援やマーケティングリサーチでは、オーダーメイドでクライアントの課題解決を叶えるスタイルのビジネスを展開してきました。取り引きのオペレーションも含めてトータルでご要望に応えるのは企業文化と言えるかもしれません」と丹羽氏は話します。
顧客によって柔軟なサービス提供をしたいという社内からの声がある一方で、業務にはアナログ作業や無駄の多いプロセスが多く残っていました。請求書は紙に印刷した上でダブルチェック後発送、その情報を販売管理システムとCRMの2系統のシステムに入力した上で双方のダブルチェックも必要、という状況でした。丹羽氏の部署では月末の残業が常態化しており、こうした状況の改善は急務でした。
3年前に現在のポジションに就いた丹羽氏のミッションは、成長を続ける同社グループにおけるバックオフィスのオペレーションを安定的かつ効率的に行える仕組みを作ることでした。この頃、契約社員等が退職し、人員を補充するかどうかの判断も迫られていた丹羽氏でしたが、人を増やさずともチームの業務プロセスを見直すことで対処できるはずだと考えました。
まずは、請求書発行に関連する機能をCRM側のみに集約するために必要な機能をPaaS上で開発し、システムの一本化に取り組みました。また、請求書の印刷・発送は基本的に廃止し、PDFファイルを送付するだけで完結するシステムへと改修しました。
この取り組みによって負荷が減ったメンバーに対して、丹羽氏は自身が抱えている業務の一部を割り振ることでタスク分散を図りました。チャットや口頭、場合によってはタスク内容をスプレッドシートにまとめて依頼してみましたが、丹羽氏はこれらの方法ではうまくいかないとすぐに気づきました。一度きりのコミュニケーションが積み重なるだけでは、依頼した側もされた側も、誰がどのタスクをいつまでにやるべきなのか、進捗状況が把握できなかったためです。その時にこれらの課題解決に貢献してくれそうなツールとして丹羽氏の頭に真っ先に浮かんだのが、ワークマネジメントツールのAsanaでした。
実は丹羽氏は2020年に、それまで2つの独立した事業会社であったクロス・マーケティング社とリサーチ・アンド・ディベロプメント社の合併に伴う業務フローの整理を担当していました。その業務改善の記録を残すためにトライアルで使用したのがAsanaでした。丹羽氏は当時を振り返り「スマートなインターフェイスや機能の使いやすさが強く印象に残っていました。その時の確かな記憶から、今回改めて導入を検討するには良い機会だと考えました」と説明します。
この頃、企業合併によって生じた業務プロセスの変更や最適化に加えて、コロナ禍によってリモートワークへの移行、ペーパーレス化や証憑の電子化など、社内の業務フローの効率化が急務でした。このことにより、事業統括グループへの問い合わせ内容はより広範で複雑になり、業務負荷も増えていました。しかし当時はこうした多様な問い合わせへの対応とベストプラクティスが担当者に蓄積されていくだけで、チーム全体での効率化には繋がっていませんでした。
もともと丹羽氏がAsanaに求めていた基本機能は、リモート環境でのメンバーへのタスク割り振り、業務負荷や進捗管理でしたが、これをきっかけに各メンバーに属人化していた業務のナレッジを類型化・定型化し、形式知として組織内に蓄積したいとも考えました。そこで丹羽氏が求める機能をすべて備えた業務の基盤としてAsanaを本格導入するための取り組みを始めました。
Asanaの採用にあたって、コスト感については競合製品と比較したものの、詳細な機能比較などは行いませんでした。丹羽氏は「SaaSの大きなメリットは、機能のアップデートによって継続的にできることが増えていくこと、すぐ始められて、合わないと思ったら簡単にやめられることです。機能を細かく比較して時間をかけて検討するより、まずは使ってみて効果を検証したほうがずっと効率的です」とその真意を説明してくれました。
さらに、Asanaがグローバルで投資家の支持を集める注目のSaaSであることも魅力だったといいます。丹羽氏も「大枠で自分たちのやりたいことができそうだという確認さえできれば、世界中で多くの企業がすでに使っているツールの世界にまずは自分たちも飛び込んでみて、そのメリットを余すことなく引き出してみようという姿勢でした」と話します。
Asanaの導入にあたってはまず、丹羽氏ともう1人のメンバーで毎月のルーティン業務を一つずつタスク化することから始めました。そのタスクをテンプレート化して繰り返し自動生成できるようにしたことで、業務を漏れなく可視化し、進捗も一目で管理できるようになりました。このことに大きな手応えを感じ、全チームメンバー5人の月次ルーティン業務を全てAsana上で管理する流れになりました。各タスクが属人化することもなくなり、丹羽氏が各メンバーの業務負荷を見ながら仕事配分をコントロールできるようになりました。個別で対応が必要になったイレギュラーな業務についても、手順を言語化してプロジェクトに整理し、ナレッジを蓄積していく仕組みを整えました。
また、Asanaで仕事依頼フォームを作成し、他部署からの問い合わせ窓口も一本化しました。フォームに入力された情報を基に自動でタスクが生成され、これも丹羽氏がメンバーの業務負荷を加味しながら最適な担当者をアサインしていくという運用方法にしました。これまでは、細々とした問合せが個人宛に社内チャットのダイレクトメッセージやメールで来ることもあり、管理を難しくしていました。「依頼があった時点で情報をシステム上で共有・可視化できれば、問い合わせ対応の漏れもなくなり対応スピードも上がります。他部署に対しては、依頼フォームから問い合わせするというルールを徹底してもらい、なぜそれが必要なのかも丁寧に繰り返し説明しました」
導入の一連のプロセスを振り返り、丹羽氏は「複雑な実装や設計が不要で、自分たちの業務のことさえきちんと分かっていればセルフサービスで柔軟にやりたいことができるAsanaだったからこそ、スムーズに導入を進められました」と感想を話しました。結果的に、現在ではチームの業務の8割程度をAsana上で管理する体制を構築できています。
1年近く事業統括グループでAsana運用後、すでに多岐に渡る具体的な効果が表れていると丹羽氏は感じているそうです。チーム内の業務を可視化し、誰に仕事をアサインすることが最適なのか判断できる環境も整ったことで、ルーティン業務の負荷分散や効率化を着実に進めることができています。実際に、毎月の残業時間はAsana導入前の5分の1程度にまで削減できています。また、ナレッジを蓄積していつでも参照できる環境は、業務の属人化を防ぎ、問い合わせ対応の迅速化を進められた点も大きな成果です。
担当業務がタスクとして可視化され、お互いがフラットに向き合えることで、各メンバーの意識にも変化が生まれています。それぞれの業務の必要性や役割をより明確に理解するようになり、日常のオペレーションの中で気づいた細かな改善をボトムアップで進める意識が根付いてきたようです。丹羽さんはマネージャーの立場としても「とにかく日々求められるオペレーションを回すのに手いっぱいという状況を脱して、会社全体が向かっている方向性に沿って未来の仕組みづくりを考える時間が創出できています」と、導入の効果を実感しているようです。
今後は、インボイス制度や電子帳簿保存法などに対応した新しい業務フローをAsanaをベースにして構築するほか、ワークフローを活用した自動化にも取り組んでいく方針です。また、事業統括グループの成功体験を踏まえて、経理部門でもAsanaを活用しており、丹羽氏は関連部署にAsanaのメリットを啓発することも考えているといいます。
Asana導入によって、業務効率の改善もチームの意識改革も実現した丹羽氏のチームでは、今後、関連部署も巻き込みながら、さらなる業務のアップデートを迅速かつ積極的に進めていく意向です。
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